信長。お金の大切さを学ぶ
「それにしても何をするにも銭がかかるな」
「何を当たり前のことを」
腹が膨れた信長は連れに庭で勝手に相撲を取らせて眺めていたが少し不満げに愚痴を溢す。
どういう訳か家に来るとこの人いつも愚痴を溢したり海外や国内のいろんな話を聞きたがるんだよね。
当たり障りのない話をしてるけどそろそろ三十回を越えてるし、いろいろ話してるうちに歴史を変えてる気もする。
「お前どうやって稼いでるのだ?」
「まあいろいろですよ。海外と取引すればそれなりに儲かりますから」
「銭が欲しい。何か手はないか?」
「親父さんに無心しては?」
「たわけ。それでは自由に使えんだろうが」
「そんなこと言われても。何かある?」
「あるにはありますが勝手に何か始めるとお立場に問題になるのでは?」
「構わん。親父は説得する」
「では一番簡単な方法で粗銅を集めることがよろしいかと。この国の粗銅には金や銀が含まれて居ますが技術的な問題からそのまま流通してますが、明や南蛮人は粗銅から金や銀を抽出する技術があり莫大な利益を上げてます。その技術ならば私共が提供出来ます」
「……それは真か?」
「はい。おそらくこの国の人間で同様の技術を持つ者は居ないかと。いずれ技術が知られれば利益はなくなりますが、それまでは十分利益を見込めるでしょう」
「分かった。集めた粗銅は如何する?」
「なるべく機密を守れる場所に職人を集めて頂ければ技術を伝えるのはさほど難しくないかと。ついでにその銅で宋銭や明銭を作ればどうでしょう」
この時代情報は本当に一部の限られた者にしか伝わらずにしかも正確でない情報も多く、オレ達の存在が信長に与えた知識や情報はもしかしたら予想以上に大きいのかもしれない。
信長はオレ達を見てお金の重要性を史実より早く学んだのだろう。
自分で自由になるお金を欲しがったんだけどオレにはすぐに思い浮かばないのでエルに話を振ると、とんでもないとことを教えちゃうし。
確かに史実ではこの時代だと明や南蛮の商人がやりたい放題だったみたいだけど。
今は1548年だから史実だと1591年に南蛮人からとある商人が技術を学ぶまでなかったらしい技術だから、単純に考えて48年は早いことになる。
「銭が欲しいなら作れと申すのか?」
「この国には圧倒的に銭が足りません。正確には犯罪と言えなくもないですが朝廷も幕府も現状が現状ですし。鐚銭など使うよりマシでしょう。今から造銭しても遅いくらいです。当面は海外に売るという名目で私共が鋳造します」
「なるほど。それでオレとお前達の双方が儲かるか」
あー、信長絶対やる気だわ。
まあここが本当に過去かも疑問があるし歴史にこだわる気はあんまりないんだけどね。
実はオレ嫌いなんだよね。秀吉って。
「なあ。若達とんでもないこと話してないか?」
「ええ。とんでもないこと話してます」
「平手様が困るのが目に見えるな」
ちなみにオレは信長の連れの人達と一緒にちょっと他人事のように見てるだけだったりする。
信長に振り回される同志として意外に気が合うかもしれないんだよね。