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水の流れを見ながら

 登城の翌日。


 屋敷は改築工事の真っ最中だった。


 改築案がこの時代の人間には説明が面倒なので、うちのアンドロイドと人に擬装したロボット兵で改築工事させてる。


 ロボット兵とはギャラクシー・オブ・プラネットにおいてエル達のような有機アンドロイドと違い安価で大量動員出来る使い勝手がいい存在だ。


 人と同じ日常会話や任務をこなす程度のAIはあるし、人工皮膚と飲食物を体内で分解することが出来る機能なんかで人に紛れることは可能だけど。


 ただ自我という点ではなく本当にプログラムした通りにするロボットでしかなく、飲食物も別にエネルギーになる訳じゃなく擬装するだけであり、あまり複雑な臨機応変な判断とかは無理だという欠点がある。


 本来はあくまでもプレイヤーやアンドロイドの手足となり艦艇などで働く労働力でしかないんだよね。


 そもそもエル達のような有機アンドロイドは開発費が恐ろしく高いから百二十体も居るの何人も居なかったはずだから。





「かず。これはなんだ?」


「ああ井戸の水を組み上げる物ですよ」


 そしてこの日は朝から信長が家に来て羊羮食べながら改築する様子を眺めてる。


 まさか羊羮毎日食べたいから家臣にしたとかないよね?


 それとオレの立場は小姓にしたらしい。


 衆道の相手だったら辞めると言ったら、言っとらんと怒られたけど。


 ただ呼ぶまで好きにしていいとも言われていて実質的に金を稼げと言うことらしい。


 あまり高い身分も家中が煩いし、低いとオレが嫌がると考えた末のようだね。


 まあ嫡男と言えどまだ若様だし、周りが小姓を一人増やした程度ならば陰口を叩いても反対まではしないみたい。


「なんだこれは!!」


「結構便利でしょ?」


「たわけ! 便利どころではないわ!」


 羊羮を食いながらあんまり屋敷内をウロウロしないで欲しいんだけど、ここに来ると退屈しないのを理解してるんだよね。


 今日信長が食い付いたのは井戸の手押しポンプだった。


 構造がシンプルでこの時代にあってもおかしくない物の一つなんだから付けたんだよね。


 水質は問題ないらしいし普通に使えるようだけど、時代劇などでお馴染みのつるべ井戸はゴミとか入るしさ。


「これも南蛮の物か?」


「それらしい噂を聞いて自力で作ったんですよ。全く別物かもしれませんし実際のところはなんとも」


「いくらだ? 城に付けれないか?」


「城くらいでしたらただで構いませんよ。予備がありましたし」


 自分でポンプを押して水を出しては感動してる信長はさっそく欲しがった。


 ただで寄越せと言わないのは多分お金の大切さや稼ぐ大変さを少しは理解したからだろう。


「かず。この国は遅れてるのか?」


「全てではないですが遅れてる分野もかなりあるでしょうね。この国の人間で遥か西の南蛮人の国に行ってる人なんて居ないでしょうし」


「南蛮人は信用出来るのか?」


「出来ませんよ。細かい話はいずれ時を改めますけどね。だから若様と私はまずは連中の利益を少しずつ奪うんです。国内を敵に回す前に銭を貯めて力を貯めなくては何も出来ませんから」


 ポンプから溢れてくる水をしばし眺めていた信長は突然この国の現状を口にした。


 新し物好きだと言われてる信長はポンプを気に入ったようだが金と銀の話なんかもあったし、まだ方法までは教えてないけど硝石の製造法の件もある。


 南蛮人に対して油断ならぬ相手だと思ったんだろうし、恐怖も少し感じてるのかもしれない。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

後に数々の発明品を世に残した久遠一馬が最初に日本にもたらしたのは手押し式ポンプだと歴史に記されることになる。


そして井戸のポンプから流れ出る水を見ながら二人だけで話したことは、後年になり信長が側近の堀秀政に昔話として話した内容として歴史に残ることになる。


堀秀政はそのあまりの内容に驚いたと伝わっていて、信長と一馬が家督を継ぐ前から海外に目を向けていた事実として語られることになる。



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