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戦よりも忙しい秋の始まり

「よろしくお願いいたしまする」


 信秀との話の翌日には早くも河尻与一が挨拶に来た。


 一族郎党共に那古野に引っ越して来るみたいで、先行して挨拶に来たらしい。


 戦の直後には無用の情けを掛けられたと怒っていたみたいだし、何故家に来たのか聞いてみたい気もしたけど、聞かないことにした。


 守護代の家老から陪臣になるのに、 いろいろ考えないはずはない。


 少なくとも誇り高い人のようだから、疑うようなことは聞くべきではないだろう。


「仕事はあるから助かるんですけどね。一益達だけでは手が足りなくなりそうだから。牧場と診療所は知ってるだろうけど。この秋からは若様と殿の直轄地の一部の代官と、津島に水軍を新たに創設するつもりなんだ」


 実際問題使える人は欲しいのが本音なんだよね。


 農業改革の為に信長と信秀の直轄地の一部の代官をさせてもらうことにしてるし、水軍の創設もある。


  技術やノウハウはあるが、この時代の人って価値観がオレ達と違うから扱うの大変なんだよね。


「水軍ならば知多半島の佐治水軍が居ります。大殿は知多半島を臣従させるのではないのですか?」


「すぐに動くとは聞いてないね。出来なくもないんだろうけど。水軍の目的は津島の防衛だから。知らないかもしれないから教えておくけど、津島は拡張する予定なんだよ。あと家の南蛮仕込みの技術を仕込める水軍が欲しい」


 河尻与一が来たので、エルと滝川さん達とみんなで今後の話をしていくけど、河尻与一はこのまま知多半島を臣従させると思っていたみたい。


 まあ分裂していた守護代家が統一されたしね。


 普通に考えたら下四郡の統一を考えるべきなんだろうけど。


 この件は信秀や信長と清洲の件の前に話したけど、少なくともこの秋から冬に掛けては様子を見ることにしている。


 勢いもあるし銭もあるから、このまま動いてもいいんだろうけどね。


 たま佐治水軍とは今まで上手くやって来たという事情もあるし、どのみち数年待てば力関係で向こうから臣従すると言うだろう。


 まあ、これを理解してるのは信秀と信長と平手政秀くらいだけど。


「河尻殿には銭を融通するので、使える人間は領地から連れてきて下さい。正直家は人が足りないので。領地が欲しければ殿にお願いして、いずれ与えるようにしますから」


 河尻与一は少し気難しそうな顔をしてるけど、この前とは別人みたいに礼儀正しい。


 あれほど商人風情がと言っていたのに。


 ただこのくらい切り替えられないと、この時代生きて行けないんだろうなぁ。





「かず。話は終わったか?」


「ええ。ある程度は」


 河尻与一を交えた話が一段落した頃、庭で火縄銃を撃っていた信長が縁側に座り声をかけてきた。


 今朝から家に居たのに、河尻与一が来てから遠慮したのか声を掛けて来なくて、しばらくジュリアやお供の皆さんと火縄銃撃ってたんだよね。


「診療所だが、予想以上に那古野に人が増えていてな。河尻達の屋敷も必要であろう。町を広げる必要がある。一から建てるのでも構わんか?」


「はい。いいですよ。ただ家でも人を雇いたいので、その人達の家も考えて欲しいです。百人から二百人は出来れば雇いたいですから」


「そろそろ自前の兵も必要か」


「診療所の警備くらい自前でしないとダメかと。それに農民よりも専門の兵を揃えた方が将来的にはいいですよ」


 清洲を支配したことで織田弾正忠家は守護代となり、清洲から近い那古野の安全性は格段によくなった。


 流石に清洲から人が大挙して移住して来る事態は避けられたが、それでも診療所の存在もあって那古野の人口は増えつつある。


 元々この時代の那古野は栄えた町ではないが、オレ達が越してきて以降は人が増えていて、最近では目端が利く津島や熱田の商家が、小さいながらも店を出す者が現れたりしていた。


 信長とオレ達って尾張でも有数の金持ちだからね。


 以前から話している診療所は、医学学校と併設する予定なので、学生となる者達の住居も必要だろう。


 それとエルからの提案で、蔵を那古野にも増やすように信長には進言している。


 この秋からは麦を来年の春からは米を増産する予定だし、醤油や酒を造るにも蔵が必要だ。


 尾張の場合は水害の危険があるので、食料を備蓄する蔵も欲しいんだよね。


 それと河尻与一の件は想定外だけど、オレ達は常備兵を揃えるつもりでいる。


 領地はないが牧場は事実上家の管理下だし、診療所にもそれなりの警備が必要になるだろう。


 兵農分離は戦国時代を勝ち抜く必須だけど、今まで農民兵で戦ってきた武士達に、いきなり兵を雇えと言っても無理だしね。


 家がモデルケースとなり、いずれ織田弾正忠家で常備兵を揃えるようにすればいいだろうから。


 平時は警備と土木工事をさせるにもちょうどいいしね。


 近代的な農業とオレ達の用意した品種なら、米の収穫は倍にはなるだろう。


 機械化して味を気にせず、とにかく量を増やしたいならもっと増えるだろうけど。


 とにかく米の乾燥が終わったら追肥して新しく宇宙で作った品種の麦を植えて、津島と那古野の牧場と診療所の工事をしないといけない。


 正直戦よりこっちの方が先なんだよね。




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