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プロローグ

「かず! 腹が減った。飯を出せ!」


「またですか? 若様。うちは飯屋じゃないんですけど?」


 もうすぐ桜が咲く春の気候に縁側でうたた寝していると、突然庭から堂々と入ってきて勝手に縁側に座り食事を要求して来た者達が居る。


年の頃は少年とも青年とも見える年齢で、中心人物は荒っぽく纏めた茶筅髷に着物は着崩していて腰には荒縄に瓢箪と巾着に太刀をぶら下げた若者だ。


 実は彼はここ尾張国津島の実質的な支配者である織田弾正家嫡男である織田信長その人だったりする。


 話せば長くなるがギャラクシー・オブ・プラネットというSF系VRMMOをプレイしていたオレは、本拠地にしていた宇宙要塞と共に何故かリアルの戦国時代らしき宇宙に飛ばされてしまった。


 宇宙要塞に籠ってても暇なんで戦国時代を見物しようと地上に下りて戦国時代にしてはあまり危険の少ない尾張国津島の郊外にあった家を借りて、信長でも見物しようとしてたらあっさり本人に会ったんだけど目を付けられちゃったんだよね。


「若様も皆様もどうぞ」


「おお、いつもすまんな。ほら土産だ」


 突然人の家に来て飯を出せと言うのはまさに信長らしいというかなんと言うか。


 ただこの人いつも手ぶらではなく鷹狩りの獲物なんかを土産として持参してくる。


 そんな信長に用意していた白いご飯と味噌汁に猪肉の味噌焼きを出したのは万能型有機アンドロイドのエル。


 すらりとした脚に出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでる金髪爆乳のスタイルに癒し系とも言える柔らかな雰囲気を持つ彼女は、本来はギャラクシー・オブ・プラネットでの副官だったが説明が出来ないので妻にしている。


「やはりお前の米は美味い。これを食うと他の飯が不味く感じるわ! それにこの羊羮が美味い!」


 ガツガツと丼に一杯の飯を二杯三杯と食べた信長達はご機嫌な様子で食後のデザートの羊羮までペロリと平らげた。


 特に信長のお気に入りは食後のデザートの羊羮だ。


「そりゃ他の羊羮と作り方も違いますし砂糖もたくさん使ってますからね」


「さっ砂糖って! 若!」


 この時代輸入品しかない高級品の砂糖をたっぷり使い、ついでにこの時代にはまだ存在しなかった練り羊羮は甘党だと言われる信長の好みらしい。


 砂糖と聞いたとたんに遠慮なく食べていた信長の連れの顔が青ざめるほどの価値のようだ。


 まあ信長は那古屋城城主になってはいるし元服もしてるが、父の織田信秀は健在だし守役の平手政秀に家老の林秀貞が居るので信長自身が自由になる金や米はあまりないようでそれを以前ちらりとぼやいていたっけ?


「構わん。いずれまとめて払ろうてやるわ」


「そんなこと言うから大うつけと言われるんですよ」


「貴様に言われとうないわ。働きもせずに異人の嫁を何人も抱えて贅沢な暮らしをしおってからに。貴様も得体の知れぬ怪しい奴と噂されておるのだぞ」


「別に他人が何を言おうが気にしませんよ。悪さをして稼いだ金などではありませんし」


 オレは今のところ信長に敬意も何も払ってないがこの人怒るどころか面白がってる気がするんだよね。


 まあ異人の嫁とはエルと同じアンドロイドのことなんで正確には嫁じゃないんだけど。


 ちなみに怪しい奴との噂の原因は大うつけ様がよく来ることも理由のひとつなんだけど知ってるのかね?


 ただ同時に信長と親しいから怪しい奴だ捕らえろとはならないみたいだけど。





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