表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード21(シーズン2 エピソード7) 『特製おかゆ』
81/254

続 王女のワガママ・8

 ミルシア女王陛下の部屋までそう時間はかからなかった。アルシスさんがノックをして、俺たちは中に入る。

 ミルシア女王陛下は椅子に腰かけていた。窓から外を眺めている様子だったが、入ってくるのを見て俺たちのほうを向いた。


「あら、アルシス。ちょっと遅かったじゃない。きちんと持ってきたのかしら?」

「ええ。きちんと持ってきていますよ。ほら、それを置いて」


 俺はアルシスさんに言われたようにそれをテーブルに置いた。


「……もしかして、あなた、ケイタ?」


 ぴたり。

 それを聞いて俺は思わず手を止めてしまった。

 その反応を見たミルシア女王陛下は笑みを浮かべて、


「どーして、女装なんかしているわけ? もしかして、ここはメイドしか入れないから、とかそんな理由で? うそでしょう。ちょっと、びっくりなのだけれど……」


 笑いをこらえながらも、そう言ったミルシア女王陛下。

 俺だってしたくてしているわけじゃねえよ! と反論したかったけれど必死でそれを堪えて、テーブルにそれを置いた。


「……これは、お粥?」

「貝のエキスがたっぷり入った粥になります」


 俺は簡単にそれの説明をする。

 それを聞いたミルシア女王陛下はスプーンで一口それを掬って、ふうふうと息で冷ます。


「……いい香りね。やっぱり、メリューは素晴らしいものを作るわ」

「それくらいのものであれば私たちでも容易に作ることができます」

「果たしてどうかしら? ……まあ、今はここでとやかく言う必要は無いわ」


 そうしてミルシア女王陛下は一口、その粥を口に入れた。

 まだ熱かったらしく、必死でそれを堪えつつも、何回か噛んで、それを飲み込んだ。

 笑みを浮かべたまま、ミルシア女王陛下は無言でそれをまた掬い口に入れて、また掬う……というルーチンワークのようなことを始めた。

 やっぱり美味しいものを食べると、無言になる人が多い。

 とやかく言っている人もいるけれど、こんな感じになる人のほうがモノを美味しく食べている、という感じがする。いや、別にとやかく言っている人に文句をつけたいわけではないが……。

 ミルシア女王陛下が粥を食べ終えたタイミングを見計らって、アルシスさんは俺のほうを向いて、


「まことに申し訳ありませんが、このお皿を洗っていただけませんか? ……これから、ミルシア女王陛下は着替えをしないといけませんので、そこに男性が居るのは非常に面倒なことになります。……それくらい、常識の範疇で理解できますよね?」


 だからどうして逆撫でするような発言ばかりするのか。

 そう思いながらも言い返すことは出来ず――俺はそれを受け取って、先ほどの厨房へと向かうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ