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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード21(シーズン2 エピソード7) 『特製おかゆ』
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続 王女のワガママ・7

 それを聞いて、俺は理解した。

 確かに魔術が衰退し、その反対に魔法が発展する理由も頷ける。難しいものは、なかなかやろうとは思わない。はっきり言って、それについて腰を据えてやろうと思う人間くらいしかいないだろう。そう考えると魔術に対する門戸は狭い。

 対して魔法は詠唱だけで発動ができる、非常にシンプルなシステムだ。門戸が広い分初心者が入ってそのまま根付いていくか、或いはたまに使うかのどちらか。どちらにせよ、このままであれば魔法を使う人間のほうが多いのは半ば当然なのかもしれない。

 アルシスさんの話は続く。


「……まあ、魔法も一応素質がある。別にこの城に仕えているメイドが全員魔法を使えるわけではない。魔法を使えないメイドだって居ることも間違いないし、別にそれだからと言って差別することもない。当然といえば当然だ。それに、そんなことで差別することは非常にくだらない話であるからね」


 アルシスさんの話は矛盾を孕んでいた。

 即ち、魔法が使えないメイドを差別することはくだらないが、亜人を差別することはくだらないことではない――そういうことになる。

 それについての間違いを。

 それについての矛盾を。

 アルシスさんはきちんと理解したうえで話をしているのだろうか?

 そうであったとしても、そうでなかったとしても。俺にとっては少々嫌な話であるということには何ら変わりはないけれど。


「……そろそろ煮えてきたのではないですか?」


 リーサの言葉を聞いて、俺は慌てて火を弱める。確かに鍋の中身を見ると、コトコトと煮えたぎってきているし、香りもいい香りだ。貝を使っているのか、潮の香りがする。

 適当なタイミングでさらに火を弱めて、完全に火を止める。


「出来上がりかしら?」


 アルシスさんの問いに、俺は頷く。

 それを見てからアルシスさんは鍋の中身を覗いた。


「成る程……。貝を使った粥ね、もちろん貝本体を使っているわけではなくスープの旨味として使っている程度だと思うけれど。香りは悪くないようね」


 そうしてアルシスさんは火が消えたことを確認してから扉を開けた。


「それじゃ、次に向かう場所は……もう薄々気づいていると思うけれど、ミルシア女王陛下の部屋だ。熱が出ているからな、あんまり外に出て体調を悪化させるわけにもいかない。一応言っておくが、粗相のないように、な? まあ、幾度となくミルシア女王陛下があの店に来ているらしいから、粗相のないようにはなっているとは思うが」

「……もうちょっと、刺々しい口調を何とかしたらどうですか?」

「何か言ったか?」

「いえ、何も」


 おっと、つい声に出てしまった。失敬、失敬。仕事を失いかねない。


「……ならいい。では、向かうぞ」


 アルシスさんはそう言って部屋を後にした。

 俺とリーサもそれを見て後を追いかけるように部屋を出て行くのだった。


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