旅する魔女・後編
「リーサ……うん、いい、かわいい。ねえ、ちょっと制服を着てくれない? ちょっと、きっとあなたに似合うと思うのよ!」
まさかそれが理由だったのか!?
たまに思うのだけれど、メリューさんって女性をコスプレさせる癖があるのだろうか?
そんなことを考えているうちにメリューさんはリーサを連れて裏方へと向かった。もうこれ以上追いかけることはできない。当たり前だが、女性の着替えを見に行くなんて変態のすることだ。
だから俺はカウンターに残された皿とコップを片付けるために、ゆっくりとそちらに向かうのだった。
◇◇◇
メリューさんとリーサが戻ってくるのはそれから五分後のことだった。ちょうどリーサが食べていたチャーハンの入っていた皿を洗い終えたところのことだったので、一息吐いていたそんなタイミングのことだった。
「ほらほら、ケイタ! 見てみてよ、私の目に狂いはなかったわ!」
そんなことを言ってきたので、俺はそちらのほうを見た。
そこにいたのはメリューさんと、メリューさんと同じタイプのメイド服を着たリーサだった。
リーサは恥ずかしそうにスカートの端を持っていた。どうやら普段着用している服に比べてスカートが短いらしい。
「……このスカート、短くないですか……?」
リーサは顔を赤くしてそう言った。
対してメリューさんは、
「大丈夫よ、リーサ。あなた今最高に輝いているわ!」
「答えになっていませんよ……!」
うん。それは俺もそう思う。
スゴク恥ずかしそうにしているので、どうにかそれを終わらせていただけないものか。せめてスカートを長くすることとか。俺だって目のやり場が困る。
まあ、きっとすぐに終わるだろう。俺はそう思い他人のふりをして片づけを再開した。
後日談。
というよりもただのオチ。
結局スカートの丈はあれから若干長くなった。メリューさんは溜息を吐いていたけれど、目のやり場に困っていたのは俺だけではないはずなので、仕方ないだろう。
「……それにしても、こう見るとメイド服が四人か……」
何で俺、一人だけ男なんだろうか。
……俗に言うハーレム状態というやつなのかもしれないが、残念ながらそんな創作的な展開が起きるわけはない。そう思いながら、俺は朝メリューさんが読んでいた新聞を読み進めていた。情報を得ることは大事だからな。それに、ここで仕事をしているうちに幾つかの世界の言語も学ぶことができた。まあ、日常生活で使うか、と言われると使わないのだが。
そこにあった小さい記事の見出しには、こう書かれていた。
――西の魔女が突如消えた。旅に出たといわれているが、どこへ向かったかはっきりとしていない。魔女の特徴は――
その記事に書かれていた特徴――それを読み進めていくうちに、どこかで見たことのあるような特徴ばかり書き綴られていたけれど、
「……まさかね」
そんな偶然が重なるわけがない。そう思いながら現実逃避も兼ねて新聞をカウンターに置いた。
エピソード20 終わり