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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード19(シーズン2 エピソード5) 『レバニラ丼』
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『血』肉の料理・前編

エピソード19

 ヴァンパイア。

 またの名を吸血鬼と呼ばれるそれは、人の血を吸うことを食事としている種族。

 ……と、大層な説明をしたけれど、実際俺もそれくらいしか知らない。フィクションでは良く登場している、と言うくらいかな。

 さて、どうしてこんなことを話しているとすれば――。


「血が足りぬ。……おい、そこの店員、血を吸わせろ」

「それはちょっと出来ない注文ですね、申し訳ありません」


 カウンター席に座っている一人の女性のことが原因だった。

 純白のドレスに身を包んだその女性は、見た感じで高貴な出で立ちであることが理解出来る。

 しかし今は気が立っているのか、八重歯を見せて頻りにあるものがやってくることを気にしている。

 もう理解出来ている人も多いかもしれないが、彼女は吸血鬼だった。それも、吸血鬼の王国に住む、それらを統べる女王だった。

 なぜそのような人が居るのか、ということについては割愛しておこう。ボルケイノに入るための扉は世界各地に点在しているため、入ろうと思えばどの世界からも入ることが出来る。

 そうしてその女性は何名かのお付きとともに入ってきて、開口一番こう言った。


『血を寄越せ』


 あいにく、そのようなメニューも無いし、流石に血を提供するわけにもいかない。誰の血を与えればいいのか、って話になるし。

 そういうわけでメリューさんを筆頭に血を提供することについては拒否した。

 しかし、代わりにメリューさんはこう言いのけた。


「血を提供することは出来ませんが、血に関する料理であれば提供することは出来ます。それではダメでしょうか?」

「血に関する料理? 食べることで血を吸収するという類か?」

「そういう類ではありませんが……恐らく血を提供出来ない私たちの最善策であると感がられます。そしてこれは……そうですね、折衝案とも言えるでしょう」

「折衝案……か。解った、ならばその料理を貰おうか。ただ、私は現状血を欲している状況にある。急いでくれよ。そうでないとこの女子の血を吸うてしまうかもしれない」


 そう言って女性はサクラを見つめた。サクラは怖がってしまい、声をあげてしまうところだったが、すんでのところでそれを抑え込んだ。


「ありがとうございます。それでは、少々お待ちください。……お付きの方々にも同じメニューを提供して問題ありませんか?」

「ああ、問題ないとも。いいから早く料理を作ってくれ。私は調理には疎いが、それなりに時間がかかるのだろう? ならばここで無駄話をしている場合ではないだろう?」

「そうですね、お気遣いありがとうございます」


 お辞儀をしてメリューさんは厨房へと向かっていった。

 記憶の再生、終了。

 因みに、ちょうどこの出来事があったのが、十分前くらいのことになる。にもかかわらず、すでに女王様はイライラしている。カルシウムが足りないのではないだろうか? そんな冗談も言えないくらい緊迫感あふれる空気に包まれていた。


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