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ケイタのクラスメイト・結

「あなたにとっては違うのでしょう?」

「……え?」


 少女の言葉を聞いてケイタは首を傾げた。

 少女はなおも話を続ける。


「だって普通に考えてみれば、あなたはここでずっと働いてきたのでしょう? それは誇らしいことじゃない。私とおなじ年齢で働いているということ、ほかの人が知ったら驚くわよ?」


 それはその通りだ。

 ケイタが何を言っていたのか、はっきり言って私は知らないし知るつもりもない。そこに関してはプライバシーのこともあるからな。かなり面倒になるから、面倒になることは、私は放置しておきたい主義だ。


「それはそうかもしれないが……」


 ケイタ、折れるのが早すぎる。

 いくらなんでももうちょっと粘ったりしないのか……。

 そんなことを言ってしまうと、いったいお前はどちらの味方なのかという発言が出てしまうけれど、私は中立の立場だ。それが一番便利と言ってもいい。


「……解ったわ」


 そこで少女は溜息を吐いて、納得したかのように私の前に立った。


「あなたがオーナーの方?」

「まあ、そうなるな」


 正確に言えばティアがオーナーになるのか? まあ、どちらでもいいと思うけれど。実際経営をしているのは私だし。


「こんなことを言うのは、大変烏滸がましいことかもしれませんけれど……、私をボルケイノで雇ってはもらえませんか?」

「……いいよ」

「そうですよね、こんなこと突然言ってしまってほんとうに失礼だと…………え?」


 テンプレートのような反応を示した少女は私を見て目を丸くした。

 いや、だって人は多いほうがいいし。特に今の状況、ケイタと私、それにティアだけじゃ心もとない。誰か雇おうにも誰も知らない人間をバイトで雇うのもちょっと心が引ける。じゃあ、誰かの知り合いと言っても私には知り合いと呼べる人間はもう居ないし、ティアはそもそも問題外だ。となると、ケイタに頼ろうと思っていたのだが……。


「別に構わないよ。人手不足だったことは確かだ。だから、雇うことは可能だ。……一応言っておくが、過酷だぞ?」

「はい! それは百も承知です!」


 そう言って笑顔で頷く少女。


「……そういえば君の名前を聞いていなかったな。名前は?」

「私は柊木桜、と言います」

「サクラ……か。解った、よろしく頼む。では早速今日から働いてもらうことは可能か?」

「ええ、大丈夫です!」


 唯一ぽかんとした表情を浮かべているケイタだったがそんなこと知ったことではない。今ボルケイノは人手不足だ。人が必要なのだ。猫の手でも借りたい、とはケイタの世界でよく使う言葉らしいがまさにその通り。現在、そのような状況がボルケイノには訪れているのだから。

 頷いて、私はサクラに言った。


「それじゃ、制服を用意しよう。ついてきて」


 そう言って私はサクラをバックヤードへと案内していった。

 サクラは私に付いていこうとしたタイミングで踵を返し、ケイタのほうを向いた。


「そういうことだから、ここでもよろしく! ケイタ!」


 ボルケイノも、少しは騒がしくなるだろう。

 私はそう思いながらその光景を眺めていた。


エピソード16 終わり

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