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ケイタのクラスメイト・転

 そんなこんなで街の雑踏を抜けて、いつもの場所に到着。

 時計を見ると、いつもより五分オーバー。まだ許容範囲内か。とはいえ、メリューさんに怒られるのは確実だろう。


「ふーん、こんな暗いところでいったいなにをするのかしら? ケイタくん?」


 その声は、今の俺にとって悪魔の囁きにも聞こえるものだった。……いや、それは大間違いか。正確にいえば、魔王の言葉かも。世界の半分をくれてやろう的なやつ。

 そこに立っていた人間を、今更説明する必要もないだろう。

 そこにいたのは、桜だった。


「どうしたのよ。まるで私に見つかるのがこの世の終わり、みたいな顔しちゃってさ。そんなに私に見つかることが、不都合でもあるわけ?」

「いや、そんなつもりは……」


 ない、といえば嘘になる。

 もっと言うならば、不都合しかない。このままだと俺がボルケイノに向かうことができないじゃないか!

 ……というツッコミはさておき。

 問題を解決する必要がある。目の前にある、ビッグバン級の大問題だ。それを解決しない限り、俺はボルケイノへと向かうことが出来ない。


「ねえ、どうして私に隠し事をするの?」

「その言い回しだと、俺はお前に一切隠し事してはいけない、という結論にたどり着くのだが?」

「当たり前でしょう?」


 まさかの全肯定!?


「別に疚しいことは無いのでしょう? だったら別にいいじゃない。それを教えなさいよ。あなただけ面白いことに手を染めようったってそうはいかないわよ!」


 まるで俺が悪事に手を染めているような言い回しだが、完全に語弊しかない。

 刻々と時間は迫る。このままだと間に合わない……。

 ここで、俺は、一つの賭けに出た。俺はこいつと長い間腐れ縁を続けてきたけれど、口が堅いことは知っている。


「……なあ、お前、もし俺が人にあまり言えないことをしていたとしても、話さないか」

「明確に悪いことを働いている、と私が認識しなければ、ね。どうしたのよ、そんな真面目な口調で話しちゃってさ」

「いや、ちょっと気になっただけだ。……そうか、明確に悪事と認識しなければ、か……」


 俺がしていること。

 それは簡単に言えば喫茶店のバイト。ただし、その場所はどのような世界にもつながる『異世界』だ。

 異世界の喫茶店でバイトをしている――端的に言えばそれだけだが、それを言って果たして理解してくれるだろうか? 常識を持っている人間ならば、頭のおかしい人間と思われるか、あるいは妄想を適当に言っているかのいずれかと感じとるに違いない。

 だが、実物を見せればきっと――。

 そう思った俺は、頷いて、桜に言った。


「お前にいいものを見せてやるよ。ただし、これから見るものは口外しない、という約束でね」



 ◇◇◇



 ……ことの顛末を聞いて、私は溜息を吐いた。

 だって、そうだろう? つまりこいつは、口が堅いだろうという認識だけで、勝手に異世界に連れ込んだということなのだから。まあ、それについては別に問題ない。だって客として持て成せばいいのだから。


「……別にいいじゃない。ここで立派に働いているのでしょう? 何を隠す必要があるわけ」

「だって、考えてみろよ。異世界で働いています、なんて言葉誰が信用できる? 誰も信用できないと思うぞ。現に俺もここに来た時は理解できなかった。今はもう慣れているけれど」


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