表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/254

プロローグ ボルケイノは大忙し!

 ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。

 おそらく世界で唯一だろう、ドラゴンメイドが喫茶店を開いている場所だ。一応、念のために言っておくが、ドラゴンメイドという種族が居るのであって、ドラゴンがメイド服を着ているわけではない。もっと言うならばドラゴンメイドがメイド服を着用しているわけだけれど。


「おい、ケイタ! 料理が出来たから、持って行ってくれ!」


 ボルケイノには店員が俺を入れて三人しかいない。そして料理を作る専任スタッフは、裏で料理を作っている――正確に言えば、今俺を呼んだメリューさんしかいない。

 俺はどんな仕事をしているかと言えば、一言で言えばホールスタッフ、だろうか。

 正確に言えばカウンター、その他テーブルでの客との対応を指す。あとは皿洗いもやっている。ただしそれはあくまでもお客さんとの仕事が忙しくなければ、という前提条件があってのこと。忙しいときはメリューさんかティアさんにお任せするパターンもある。


「それにしても最近は忙しい……」


 どうしてか、最近はお店がとても忙しい。店を経営する人間からすれば嬉しい悲鳴なのかもしれないが、従業員が増えない現状を考えるととても大変ではある。メリューさん自体あまり従業員を増やしたがらないので仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが、しかしこのままだと過労死しかねない。


「しかしどうすればいいかしらねえ……」


 落ち着いた一瞬のタイミングで、メリューさんが言った。

 どうやらメリューさんもこの状況を危惧しているらしい。


「……やっぱり従業員を増やしたほうがいいんじゃないですか。具体的にはホールスタッフを」

「ケイタ、言わせてもらうけれどね。こちらだって人手不足なのよ。出来れば料理を作る補助のスタッフでもいてくれると大変便利ではあるけれど……」

「でも料理スタッフの追加のほうが大変じゃないですか? メリューさんのタイミングに合わせるスタッフなんてそれこそ難しいですよ。だったらホールスタッフを増やして、料理はティアさんに手伝ってもらったほうが……」

「それ、ティアが絶望的に料理出来ないことを解っていて話しているわよね?」


 そう。

 ティアさんは絶望的に料理が苦手だ。だから手伝いと言っても野菜の皮を剥くなどの下準備や、皿への盛り付け程度しか出来ない。結局は食事の大半をメリューさんが作る羽目になってしまうのだ。


「……それは近いうちに解決しないといけないわね……」


 メリューさんがそう言って、どこか窓の外に目線を向けた。

 季節はもうすぐ春。出会いの季節、とも言われている時期だ。

 もしできれば、ボルケイノにも新しい出会いがあればいいのだけれど――。

 そう思いながら、俺は溜まり溜まった汚れた皿を洗うべくスポンジを片手に歩き出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ