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ボルケイノの最後の仕事・中編

 私はドラゴンの山を登っていた。

 まさかこれほど早くこの山を登ることになろうとは思いもしなかった。

 なぜ私が登っているか――正確に言えば、この山を登る理由はただ一つ。

 私をボルケイノに送り込んだあのドラゴンに、目的を達成したということを伝えに行く。

 それが、私がここにやってきた理由だった。


「……もう少しだ」


 そう言って、私は一歩一歩進み続ける。

 その先に――何が待ち受けていようとも、もう私は覚悟を決めているつもりだった。



 ◇◇◇



「どうやって行くんだ?」

「だから言っているだろう。これを使うんだよ、これ」


 俺はティアさんの目の前にあるものを、改めて見つめる。

 それはフラフープのような穴だった。しかしながら、その穴の向こうは俺のよく知る場所――すなわち、穴が貫通していなくて、別の場所へとつながっていた。


「これを通れば、メリューの目の前に到着するはず。思いを伝えてきなさい。きっとそうすれば、きっと彼女も理解してくれるはず」

「ちょっと待ってくれ。まだ踏ん切りがつかなくて……」


 俺は突然のことに、普段の対処ができなかった。

 どうすればいいのか。どうやればいいのか。

 そのことについて、ただじっと悩んでいたのだ。

 何を考えているのか。今思えば、あほらしい話だ。

 だって、考えてみろ。

 俺はメリューさんに話を聞きたくてここに来たんだぜ?

 なんで今更逃げ出すんだよ。訳が分からねえよ。

 さあ、走り出せよケイタ。お前は主人公だ。お前はお前の世界の、お前の物語の主人公だ。お前が走らずとも走っても、世界は進んでいく。お前の考え、選択で世界はどこへでも向かっていくさ。それこそ、繁栄するか滅亡するか、まで。


「決心がついたようなら、さっさと行ってくるがいい」


 そう言ってティアさんは後ろの穴を指さした。


「ティアさんは……?」

「私は付け入るスキなんてないから。ただ、見守ってあげるよ。だってこれは、あなたの物語なのでしょう? あのボルケイノを生かすも殺すも、今はあんたの選択にかかっているわけよ」


 それは間違いなかった。

 俺はメリューさんに聞きたかった。

 どうしてあんなことをしたのか、その真意を。

 俺の考えが、もしメリューさんの考えとイコールならば……!


「さあ、行ってこい!! ケイタ!!」


 そして、俺は。

 穴の中に飛び込んでいった。



 ◇◇◇



 私は門の前に到着した。


「それにしても……私が来ないしばらくの間に、こんな立派な門を作り上げちゃって。まあ……。もしかしたら作ったのは、人間なのかもしれないけれどね。ドラゴンに畏怖して、祠みたく祀り上げたのかも。ああ、その可能性は十分にあり得るな」


 まあ、そんな疑問はどうだっていい。

 今は、目的がある。それを早急に達成せねば。


「メリューさん、待ってくれ」



 ――私がその声を聴いたのは、ちょうどその時だった。




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