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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード13 『ミルクティーとチョコチップクッキー』
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急転直下のミルクティ・後編

 カウンターに横並び。

 三人が揃って、カレーチャーハンを目の前に待っていた。

 メリューさんがティアさんと俺を見て、頷く。


「それじゃ! 食べることにしようか、いただきます!」


 両手を合わせ、メリューさんは頭を下げた。

 俺はそれに合わせるように、同じくいただきます、と言った。

 目の前にあるカレーチャーハンは、今も鼻腔を擽っている。

 スプーンを使い、一口頬張る。すぐに口の中にカレーの香りが広がる。チャーハンの中に埋もれている肉、ニンジン、ジャガイモもアクセントとしていい感じだ。普通のチャーハンならばご飯と目立たないように微塵切り、あるいは小さく細かく切られているものだが、カレーチャーハンは違う。カレーソースをそのまま使用しているためか、具材の大きさがカレーのそれとイコールなのだ。


「……ほんとう、ケイタ、あんたはうまそうに食事を食べるよ。作り甲斐があるってものだ」


 メリューさんがそう言ったのでそちらを向くと、メリューさんは俺のほうを見て笑みを浮かべていた。


「な、何か顔についていますか?」

「まあ、ついていないことはないけれど」


 そう言ってメリューさんは俺の頬に手を伸ばした。

 そして何かを取り、それを俺に見せつける。

 それはご飯粒だった。カレーの金色に染まっているそれは、まさしく俺が食べていたカレーチャーハンのそれだった。

 すると、メリューさんはそれを口に入れた。

 というか、食べた。

 そしてメリューさんは笑っていた。


「……さて、食べようかしらね!」


 そう言ってメリューさんはもとに戻ると、カレーチャーハンにスプーンを入れていく。

 俺はそれを見て、ただ何も言えなかったが――すぐに戻って、またカレーチャーハンを食べ始めた。




 カレーチャーハンを食べ終わり、皿を洗って、服を普段着に着替える。

 時間は午後九時過ぎ。今から家に帰れば、まあ、そんな時間にはならないだろう。そう思って、俺はカバンを持って外に出ようとした。


「あ、ケイタ! ちょっと待ちなさい!」


 メリューさんの言葉を聞いて、俺は振り返る。

 メリューさんは何かを持っていた。それは手ぬぐいに包まれた何かだった。紫色のそれには箱がくるまれているようだった。


「……これは?」

「余っていたから、持って帰りなさい。ここに置いとくと捨てちゃうだけだから」

「ありがとうございます」


 軽く頭を下げて、その包みをカバンに仕舞った。

 そして俺はボルケイノの扉を開ける。


「それじゃ、お疲れさまでした。また明日」

「お疲れさま」


 メリューさんの言葉を背に、俺はボルケイノを後にした。



 ◇◇◇



 次の日。

 いつものようにボルケイノのある場所へと到着した俺は、違和感に気づいた。


「……おかしいな。どうしてだろう?」


 いつもの時間ならそこに存在しているはずの――ボルケイノへと続く扉がなかった。

 あるのはただ壁だけ。なぜか、扉は存在しなかった。


「どういうことだよ……」


 実は、俺は急いでいた。

 なぜか?

 それは単純明快――メリューさんが渡してくれた箱にはクッキーが入っていた。昨日の午後とは違い、キャラメルが入ったクッキーだ。まあ、それは別にどうだっていい。味も美味しかったし。

 気になったのは箱についていた押し花だ。その花は中央が黄色で、周辺に紫の五つの花びらがある、とても可憐で可愛らしい花だった。妹いわく、その花はワスレナグサというらしい。



 ――花言葉は、『私を忘れないで』。



 その花言葉が、どうも引っかかった。

 まるで、メリューさんが、どこかに居なくなってしまうのではないか。そう思ったからだ。

 予想通り、ボルケイノの扉はなかった。

 壁しかなかった。

 不安で、不安で、仕方がなかった。

 もう二度と、ボルケイノに行けないのではないか――そう思った。


エピソード13 終わり


エピソード14に続く

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