表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/254

年越しそばと除夜の鐘・前編

エピソード12

「ええっ!? じゃあ、年越しそばを食べたことが無いんですか!?」

「食べたことが無いというか……厳密に言えば、そのような習慣が無い、とでも言えばいいか。まぁ、そんな感じだ」

「それなら俺が食べさせてやりますよ! 飛びっきり美味しい年越しそばを!!」


 そう言ってケイタは店を飛び出していった。おい、一応まだ営業中だぞ。客は居ないから問題ないと言えばその通りだが。

 はてさて、どうしてこんなことになってしまったのかといえば……それはある言葉がきっかけとなったものだった。裏を返せば、その誰かが言わなければこんな出来事には発展しなかっただろう。

 それを思い返してみると……予想以上に長い話になる。え? とくにそんな遣り取りなんて要らないからさっさと話せ……だって?

 まぁ、解った。話してやろう。どうせ私もお前も暇なんだ。その暇が少しでも潰れるように、その話をして気を紛らわすというのも可能性の一つとして存在すべきことだろうよ。



 ◇◇◇


 さて。

 どうしてこんなことになってしまったのか、それについて淡々と事実を述べていくことにしよう。

 きっかけはたった一言、その質問だった。


「そういえばメリューさんたちって、年越しのイベントはあるんですか?」


 きっとそれは、ケイタにとっては当然の疑問だったことだろう。

 しかしながら、それは私たちにとっては一種の禁句とも言える発言だったのかもしれない。

 理由は単純明快、私たちの世界に年越しイベントなんてものは存在しないからだ。普通に考えれば、それはケイタにだって理解できたはずのことだった。だってボルケイノは年中無休、ケイタたちの世界で言うところの『お正月』とやらも営業中なわけだ。しかしながら彼はその時間に休みを取りたいと言い出した、彼曰く、その時期は家族一同で過ごすのが決まりになっているのだという。彼の住んでいる国すべてがそうであるわけでは無いが、古くからの風習でそうしている家族がいるのだという。なんというか、変わった風習だと思う。まあ、そんなことを言ってしまえば彼にとって私たちの存在そのものも変わっているのかもしれないが。


「……何を言っているんだ、年越しにイベントなんてあるわけが無いだろ。強いて言うならば、一年を一生と換算している宗教があって、その宗教に入っている人間は年越しを『新しい人生の始まり』として大々的にイベントをしているが……まあ、それくらいだな。実際、年越しに関してはなんの関心もいだいていないし。……それにしても、それがどうかしたか?」

「それじゃ、年越しそばも食べていないんですか!」

「そりゃ、年越しを特別なイベントだと思っちゃいないからな。普通に麺は食べるぞ、普通に食事規制なんて無いからな。……まさか、ケイタの国では年越しは食事規制をするという珍妙な法律でもあるのか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ