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ボルケイノとの出会い・3


「……あの、何ですか、これ」


 早速少年からの質問があったので、私は言った。


「これはな、芋の煮込みだ。芋と肉、それに幾つかの根菜類を適当に入れて、マキヤソース仕立てに味付けすれば、あっという間に完成というわけだ。家庭料理としても、そこそこ有名だな」

「俺……何も注文していないんですけど」

「ここは私が食べたいものを読み取る。そして作るんだ。簡単に言えばお客さんは待っているだけで暖かいご飯が食べられる。これほどすばらしいものも無いだろう?」

「な、成る程……」


 少年はちょっと押され気味だった。まぁ、しょうがないといえばしょうがないかもしれないな。実際問題、この店はどの世界で比べてもこの一軒しかない、非常に珍しい店だ。

 だからこの店に対する疑問や「本当なの?」という考えは何ら間違っちゃいない。むしろ正しい考えだろう。


「いただきます」


 手を合わせ、フォークを手に取る。……しかし、その表情はどこか怪訝だ。いったい何があったというのだろうか?

 そういう疑問の視線を少しの間送っていたところ、彼は顔を上げて首を傾げながら、言った。


「あの……箸は無いでしょうか?」

「箸……とは?」

「二本の棒なんですが……。それを使って挟むんです。この国でこの料理を食べるときは、それが主流なもので……」


 ふむ、箸か。聞いたことの無い代物だが、それと同時に興味が湧いた。今度試しに仕入れてみようかな。

 箸は無いから、そのフォークで食べてくれないか? 私はそう言った。それを聞くと少しだけ俯いて「そうですか……」と言った。なんだか悲しんでいた様子だったが、箸はここに無いのだ。申し訳ないが我慢してもらうしか無い。

 一口、また一口食べていくと徐々に少年の感情が柔和になっていく。

 どうやら少年の舌にその料理は合ったらしい。良かった良かった、先ずは一安心といえるだろう。これで舌に合わなかったら今すぐ出て行かれる可能性だってあったわけだからな。

 まぁ、及第点というやつだ。


「ごちそうさまでした。……ふう、何だか食べたら色んなものが抜けちゃいましたよ」


 食べ終わった頃には、少年はすっかり笑顔を取り戻していた。はっきり言ってそれはとても嬉しいことだ。自分の作った料理で他人を喜ばせることが出来た、それだけで料理人の極みと言えることだろう。

 はてさて、少年は食べ終わったので普通に少し休憩後に会計、そして出て行くというのがルーチンとして間違っていないことになる。

 だがしかし、少年は会計後(余談だが彼が払ったお金は見たことが無い紙幣と小銭だった。……換金出来るだろうか? というか、してもらわないと困るのだが)、こんなことを言い出した。



 ――ここで働かせてくれませんか、と。


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