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ボルケイノとの出会い・1

エピソード11


 久しぶりだね。いやはや、まさかここまで期間が空くとは。さすがに心配したぞ。だって殆ど毎日、あるいは毎週のように来ていたのに予告無しに一か月居なくなるのだからな。心配した私の身にもなってくれよ。

 ……うん? そんなことはいいが、いつものマスターはどうしたか、って?

 そうだねぇ、彼はちょいとお休みなんだよ。彼は彼が住んでいる世界の所属に照らし合わせれば、学生という身分になるからね、今は勉強が忙しいらしいよ? まぁ、彼にとってはそれが本職なのだから致し方ないことなのだけれど。元よりそんなに忙しくないからね、彼が休もうが二人で軽く回せるのさ。

 それじゃ、どうして彼を雇っているのか――って?



 ――そいつは面白い話だ。



 食前酒代わりに聞いてくれるかい?

 その、今となっては笑い話になる、彼を雇ったときの昔話を。

 ただ、残念なことに少しばかり長い話になる。それは少々勘弁してほしいものだね。



 ◇◇◇



「メリュー、残念なことと残念なこと、どちらからお聞きしたいですか?」

「残念なことしか無いんだったら、重要度の高いものからお聞かせ願いたいものだね」

「食料が尽きました。補充しなければ料理が作れません。それと、今日も客が来ません。ゼロです」


 それくらい、どっちも知ってることだっての。だからそれをどうにかしないといけないものだったが、しかして案外そう簡単に物事は上手く進まないものである。

 ……とまあ、かつてのことをまるで今起きているかのようにナレーションしてみたわけだが、これが案外難しい。だからもう、時系列とか関係無く、ただただ適当に説明していったほうがいいだろうな。きっと今は覚えちゃいないことだってあるだろうし、逆に今だからこそ感じられることだってあるはずだ。私はそう思う。

 まぁ、つまりは……今もあまり客は来ていないんだが、かつてはその『たまにやってくる客』ですら居なかった。何かの間違いでやってくる客が、殆どだった。料理は美味いと言ってくれるが、色んな難癖をつけてくる奴らが殆どだった。だから儲けは無し、むしろ赤字と言っても過言じゃなかった。そもそもこの店を譲り受けた時点で、赤字だったけれどな。膨らみすぎて、もうどうしようもないくらいに。


「……客が来ないのは仕方がないと割り切るしかない。しかし、もう片方の問題は本物の問題だな。かなり不味い状況だ。急いでこれを脱却しないと、いざ客が来た時に具材が無いからメニューが作れません、なんて洒落にならないぞ」

「とはいえお金が無ければ何も買えません。それもまた、事実でしょう?」


 ティア――今私の目の前で淡々と事実を述べたメイド服の少女のことだ――の言い分は何も間違っちゃいなかった。正しいことしか、彼女は言わなかった。



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