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冒険者の思い出・前編

 ドラゴンメイド喫茶『ボルケイノ』は今日も暇だった。

 今日も……というか、最近客足がどこか遠退いた気がする。いったい何が原因だというのだろうか? 俺はそう思っていろいろと要因を考えるが……要因というか、原因と思われるものは、たった一つしかなかった。

 この前に起きた『ドラゴンメイド誘拐事件』。

 いや、事件という大層な名前を付けているが結局解決してしまったので、事件というカテゴリではないのかもしれない。結果として彼らを殺したのが誰なのか判明していない以上、あれ以上のことを穿り返すのは少々面倒なことだ。

 しかし、それによってドラゴンメイドは恐怖の対象だと民衆の心に植え付けられてしまった。

 まあ、あくまでもあの世界だけの話になるが、これをほかの世界でも続けてしまうと厄介なことになる。一応バイトで入っているわけだがそのバイト代が入らなくなるからな。そいつは非常に厄介だ。面倒なことといってもいい。

 とりあえず俺はメリューさんにそのことは伝えておいた。メリューさんは少々面倒な表情を浮かべつつも、それくらい解っているよとだけ答えた。ならいいのだが。

 カランコロン、と扉につけられた鐘の音が鳴ったのはその時だった。


「いらっしゃいませ」


 俺はいつも通り営業スマイルをして頭を下げた。

 入ってきたのは女性の冒険者だった。なぜ冒険者と解ったかといえば鎧と膝あてを装備していたためだ。さらに、背中には大きな剣を携えていた。

 カウンターの椅子に座ると、大きな剣を隣の椅子に立てかけた。そのとき床に剣の先端が突き刺さる。

 しかし冒険者はそのことを気にしていないようだった。……できることなら気にしてほしいのだけれど。


「メニューは?」

「この店は、あなたの今食べたいものを自動的にお出しするお店となっています」


 いつも通り、マニュアル通りの言葉をつらつらと並べる。

 ふうん、と冒険者は言って腰に携えたウエストポーチから手帳を取り出しそこに何かを書いていった。


「……何見ているのよ」


 気になってしまってずっと見ていたのがばれていたらしい。


「申し訳ございません。少し気になってしまったものですから」


 謝罪し、水の入ったコップを差し出す。


「これは手帳よ。私の冒険の記録が詰まった手帳。ずっと昔から書いているのよ。ある冒険者仲間から言われてね……気づけばもう十冊は書いている。それはすべて家に置いてあるのよ。これは最新版。それでも一年前から書いているから……あと数ページで終わりね」

「記録することが好きなんですね」

「最初は嫌いだったんだけどね」


 水を一口呷り、冒険者は話を続ける。


「でも気づけば習慣になっちゃって……これをやらないと落ち着かないというか。面白いよね、人間というのは」


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