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神なる龍の呪い・3

 ロープと鉤爪を取り出して、それを組み合わせる。そして鉤爪のあるほうを上に投げて、岩肌に引っかからせる。それだけで準備は完了だ。あとはロッククライミングの要領で山を登っていくだけでいい。それだけで切り立った岩肌だって上ることが出来る。

 ドラゴンの巣は、草木でできている非常にシンプルなものだった。しいて言えば、鳥の巣とほぼ同じような構造となっている。ただし、ドラゴンは鳥と比べて非常に大きいため、もちろんのことながら鳥と比べて大きい素材で構成されているのだが。

 巣には、ひとつ卵が置かれていた。


「おっ、ラッキーじゃないか。卵があると、美味しいスイーツが作れる。こいつはラッキーだねえ。まだドラゴン……親はいないようだし、ここは急いでこいつをかっぱらってしまうか」


 そして私は――その卵を手にした、その時だった。


『愚かな。人間が、我らの卵を盗むというのか』


 声が聞こえ、思わず私は硬直した。動けなかったんだ。まさかドラゴンがすぐそばにいるとは思いもしなかった。そして、その声は背後から聞こえたが、それを聞いても振り返ることが出来なかった。

 ドラゴンが背後に着地する。


『……本当ならば、ここで殺してしまいたいところだ。なぜなら同族に手をかけようとしているのだからな』

「卵は卵だ。生きているとは言えない」

『黙れ。そんなことはありえない。それはすなわち、人間で言うところの胎児は生きていないと宣言していることと同一になるぞ』

「……そういわれてしまえば、間違っていないかもしれないねえ。で、どうする? 私を殺すか?」

『さすがにそんなことをするほど、私は厳しいドラゴンではない。……そうだ、一つしようと思っていたことがあったのだよ』


 ひょこっ、と私の前に現れたのは小さなドラゴンだった。この大きさは、きっと子供のドラゴン――生まれてからそう時間も経過していないものだと思われる。


『一応言っておくが、ドラゴンが小さいからと言って人間にとって脅威に変わりないことは知っているだろう? 私はここを動くことは許されない。だが、私はやらないといけないことがある』

「……すること?」

『そうだ。ある喫茶店に向かい、その店を繁盛させろ。それが罰だ』

「罰、って……。私は何もしていないぞ? ただドラゴンの卵を盗もうとしただけ……。しかも実際には盗んじゃいない」

『未遂だろう? 実際にしていなくても未遂なら、十分罪として成立している』

「なんだと……。それはちょっとおかしい話じゃないのかい?」

『いいや、まったくおかしくない。これ以上話をぐちゃぐちゃにする必要もなかろう? まずは私の話を聞いてもらおうか。恩を返したいのだよ、私は。その喫茶店に』

「恩返し、ってことか?」

『まあ、そういうことになるだろうな。私はかつて、その喫茶店の主に命を救われた。だから恩返しをしたい。その店に恩返しをしたいのだよ。繁盛させるのが、店の重要条件だろう? だから私はどうにかしてそうしたかった。……だが、ここを離れてしまえばすぐに人間どもはここを占領してしまうことだろう。だから私は離れられない。だが、子供だけに頼むわけにもいかないし……』

「それで、適役が私、ということか?」

『そうだ。お前はコックなのだろう? ならば、都合がいい。むしろちょうどいい。完璧だ。なぜこのようなタイミングに来たのか……それは神のみぞ知る、と言ってもいいだろうな。それくらいの「奇跡」だよ』


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