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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード69(シーズン4 エピソード9)『スープパスタ』
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オフモードの簡単料理・前編 (メニュー:スープパスタ)

 第666次元軸という、ありとあらゆる異世界に接続することが出来る、そんな変わった世界に存在する唯一の喫茶店であるボルケイノだが、今日は休日だ。

 たまには話者を変えてみるのも一興であると、そう思ったこともあった。

 だから実際に試してみようと——そう考えた訳だ。

 ケイタやサクラからしてみれば、いつでもここは休日ではないような、そんな錯覚を感じるのやもしれないけれど、現実はそこまで単純ではない。

 私もティアから聞いただけだし、この店の全てを理解している訳ではないのだけれど。

 しかし、今日は紛れもない休日。

 ケイタ達の言葉で言えば、オフって奴かな。仕事をしない日をオフというらしいけれど、それはどういう意味合いなのかはきちんと聞いていないような気がする。まあ、全ての世界の言語を理解しようだなんて、土台無理な話であることは間違いなくて、四苦八苦していることは否定しない。

 さりとて、それを感じ取られたくないのもまた事実である。だからこそ、あんまりそんなことを気にしないようにしてもらっている——と、いう訳だ。

 閑話休題。

 何故ここまで自分語りをしているかと言えば、さっきも言ったけれど、今日はオフだ。

 一日オフというのもなかなか久しぶり……というのは嘘で、定期的な休みは存在している。しかし他の異世界からしてみれば数分或いは数時間程度で終わってしまうために、まさか扉の向こうの世界では一日過ぎているだなんて、誰も思いやしないだろう。


「……さて、と」


 これからは料理人あるあるだと思うのだけれど……、一つだけ言わせてほしい。

 オフの日っていうのは、どうして料理を作りたくないのだろうね?



◇◇◇



 ティアはひとりでに勝手に起きてくれるから未だ良いにしても、残りの三人は朝が弱い。

 それぞれ起きるまでの流れを見ていくとしようか。

 魔女のリーサ、その部屋はごちゃごちゃと散らかっている。きっと魔術の勉強に使っている物が大半を占めているのだろうけれど、言葉で熟々と述べていくと、その量がとんでもないことぐらいは、きっと理解してくれるのだと勝手に考えている。

 魔導書に薬剤なんかが床に散らばっているし、机の上には乱雑に書物が載せられている。開きっぱなしのノートには、色々と何か書いているのだけれど、残念ながら読み解けない。確か魔女にしか使うことの出来ない文字だとか言っていたっけな? あんまり記憶力が良くないから、その辺り定かではないのだけれど。


「リーサは寝かせとけば何時までも眠ってしまいそうなのよね……」


 魔女が夜型なのかどうかは知らないが、しかしながらリーサもまた朝に弱い。

 それだけは、紛れもない事実だ。

 リーサの部屋は散らかっていると言ったが、ベッドだけは例外だ。流石に毎日眠る空間だからかもしれないけれど。もしかしたら聖域だと思っているのかな、ベッドのことを?

 リーサはそんな私の考えなどつゆ知らず、ぐっすりと眠っている。

 起こしてしまうのも何だか勿体ない気分ではあるけれど、あんまり寝かしておくのも良くない。


「おはよう、リーサ。朝よ。起きなさい」


 身体を揺らして起こす。

 ……とは言うけれど、そんな簡単に起きれば苦労はしない。

 さて、こういうとき、どうすれば良いと思う?

 まあ、質問をしたところであんまり意味はない。最早分かりきっていることではあるし、ここに時間を掛けること自体がツマラナイことだし。


「んん……、もう朝?」


 あら、珍しい。

 何もせずに目を覚ますとは、今日は竜巻でもやって来るかな?


「起きろ、朝だよ。……と言っても、早朝という時間でもないのだけれどね」


 多分、昼食に片足を突っ込んでいると思う。

 けれども、そんなことを言うのは野暮ってものだ。

 さてと、次は……。



◇◇◇



 ボルケイノには、まだまだ同居人が居る。

 鬼の子であるシュテンとウラの二人だ。

 この二人は基本的に昼夜逆転だ……。だから朝に起きることはそう有り得ないだろう。

 とはいえ、たまには起きてもらわないと困る……。自分が眠っている間に勝手に食事を取っていることもあるのだ。食料庫からごっそり食料が消えていると思ったら、夜中にシュテン達が食べていた——なんてこともあった。

 だから、食事ぐらいは出来ればコントロールしておきたいのである。

 なので、わざわざ起こしに来た訳だが……。


「起きるかね、今回も」

「さあ、どうでしょう。というか、どうして私まで来る羽目に?」


 一人で起こすのは大変だから、リーサも連れてきている。

 リーサも毎回のことなのに、毎回私に質問をしてくるのもどうなのだろうか。

 と。

 そんな戯言を話し続けるのも、無駄な時間だ。

 とにかく、前に進まねばなるまい。

 そう思って、私はシュテン達の部屋へと足を踏み入れた——。


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