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神なる龍の呪い・1


 さて。

 話者はここからバトンタッチといこうか。

 え? 私の名前を知らない、だと? それは冗談が過ぎる。幾ら何でも私の名前を知らない人間など居るはずが無い。少なくとも、この店に通う人間ならば。

 ……だが、ここで改めて自己紹介しておくのも悪くない。大して話も進んでいないが、話には順序が必要だ。それが無い話など、聞くに堪えないものになるからだ。

 私の名前はメリュー・アルバート。しがないドラゴンだ。まぁ、今はメイド服を着ているわけなのだが……。

 私としてもまさか『こんなこと』になろうとは思わなかった。一応言っておくが……私はずっとドラゴンのまま生き続けてきたわけではない。

 私は人間だった。正確に言えば、今は人間ではない。

 ややこしい話かもしれないが、私の発言に間違いは無い。

 ドラゴンメイド、という単語を聞いたことがあるだろうか。言っておくが、私は知っている。一応大学で一通り教養は学んでいるからな。

 こいつの意味は二つある。一つは半分ドラゴン半分人間という意味だ。

 そしてもう一つ。

 私が言うドラゴンメイドは、こちらの意味だ。



 ――ドラゴンに姿を変えさせられた『人間』。



 普通に考えればおかしな話だろう? そんなことは有り得ない、って。だがね、だが、そんなこと無いのだよ。ドラゴンが人間に形を変えたのではなく、人間がドラゴンの呪いを受けた。それは私のミスであり、裁かれるべき案件であり、事態であり――。

 ……話が長くなってしまったな。非常に申し訳ない。実際問題、私もここまで長くするつもりは無かったがついつい話が長くなってしまった。話とはそうやって寄り道をしながら本筋が少しずつ語られるものだ。多分、きっと、そういうものなのだ。

 さて、物語を再開しよう。きっと聞いていてつまらない話だった――そう思っているだろう。この時間をほかのことに使うことが出来れば、なんて思っているだろう?

 もしそう思っているならば、申し訳ない。だが、仕方ないことなのだよ。君が知りたいそのことを、君が理解するまでのお膳立てだ。そう理解してもらって構わない。もっとも、未だ話は半分も終わっていないし、そもそも始まってすらいないのだけれどね。



 ◇◇◇



 あれは寒い日だった。まだ私が人間だった頃の話だよ。人間の頃は何していたか、って? 君も物好きだな。いや、別に悪い話じゃない。何であれ興味を持つことはとても素晴らしいことだと思うからね。

 私は人間の頃、コックをしていた。まぁ、どちらかといえばその時は冒険家の方が比重が大きかったかもしれない。

 何せ、私は食材を自分で調達していたからな。簡単なものならまだしも、貴重な物品なんてそう簡単に手に入るわけもない。高い山を登り、深い森を掻き分け、自分で食材を求めていった。それが大変なことなのではないか、って? おかしなことを聞くな。確かに大変だったが、実際に食材を手に入れて、それを自分のレシピで調理して、自分の思い描いた味になったときの達成感のことを思えば……その苦労など、気にならなかったよ。


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