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プロローグ また朝がやってくる
……変な夢を見ていた。
気味の悪い夢とも、意味のない夢とも、訳の分からない夢とも言える。
私が、ケイタを犠牲に、ドラゴンメイドを辞める夢?
あほらしい、そんなこと起きるはずがない。
自分の意思で、そんなことをする訳がない。有り得ない。
「……最近、忙しかったっけな?」
いや、違うな。忙しいことはなかった。寧ろ暇なことだらけと言って良かっただろう。
寝室の窓からは、星が見える。
どんな世界にも干渉出来る第666次元軸に存在するこの喫茶店は、この空間だけの時間が流れている。
あと三時間もすれば、夜は明けるだろう。
どうして昼と夜の概念が存在しているのか、って? そんなこと、私が知る訳がないだろう。私だってここに途中からやって来た人間だ。この店の仕組みを理解するのには、あとどれぐらい掛かるだろうか……。
「……まあ、そんなことはどうだって良い」
また、眠ってしまえば。
また夜が明ければ。
また一日が始まるのだから――。
明けない夜はない、そう思いながら私はもう一度目を閉じる。
そして、私が再び眠りに落ちるのは、そう遠いことではなかった。




