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占いとラッキーアイテム・中編

「彼女はつい二時間前に寝たばかりでね。だが、もう時間的に夜の作業もしなくてはならない。運がいいことに、この二時間誰も来なかった。ほんとうに運がいいことだよ」

「それは確かに」


 仮に誰か来ていたら強引にでも起こさねばならない。従業員が寝ているお店なんて、言語道断である。

 まあ、だからといって彼女を強引に起こすことで何が起きるのか――それは、もう、誰もが解っていることだった。


「どうしましょうかねえ……。もうこれ以上作業の邪魔になってしまうし。寝相が悪いことを覚悟して起こすしかないかもしれないわね。そうなったときは、ケイタ、頼むぞ」

「ええっ」


 それはとんだとばっちりだ。

 最低だと、言ってもいい。


「でもどうやって起こすんです? 寝相が悪いことは知っていますけれど、起こすまでが大変なのも一緒じゃないですか。だからまず起こさないと」

「解っている。解っているよ」


 頭を掻いてメリューさんは言った。こういう時のメリューさんは考えていてまだ頭の中に考えがまとまっていない様子を指しているので放っておいたほうがいい。逆にここでぐだぐだと言っているとまた問題を引き起こすことになる。正直ティアさんの問題だけでおなか一杯なのにここで問題を増やしたくない。

 さて、ならばどうすればいいか――ああ、何も問題がなければメリューさんに占いの話でもしようと思っていたのに――ん?


「占い?」


 俺は最後に思っていたその単語を呟いた。

 それを聞いたメリューさんが顔を上げる。


「……どうした、ケイタ。唐突にそんなことを言って。気でも狂ったか?」

「違いますよ! 占い、アイテム、ラッキーアイテムです! ラッキーアイテムはバーニャカウダ……うん、これだ!」

「何を言っているのか、さっぱり解らないのだが……」

「いいから、僕の言うものをこれから作ってください!」

「言うもの? 食べ物で釣る気か?」

「まあ、間違ってはいませんけれど」

「そんな簡単に釣れるものかね?」

「まあ、やらないと解らないじゃないですか」

「食べたいだけじゃないのか?」

「……違いますよ」


 そこは自分でも、オイすぐに否定しろよ、と思った。

 それはともかく、メリューさんに料理を作ってもらうことにしよう。

 俺のラッキーアイテム、とびっきり美味しいバーニャカウダを。



 ◇◇◇



「先ずニンニクを用意します」


 そう言って俺はオーブントースターで事前に焼いておいたニンニクをマグカップの中に入れた。量的には一欠片。本当は一気に潰してしまえばいいのだが、それほど多くのものを食べなくていいので(時間的な意味で)、取り敢えずこれでいいだろう。あと、接客業が口からニンニクの匂い漂わせるのもダメな話だし。

 つぶしたニンニクにバーニャカウダの残りの材料を入れていく。俺の隣でぐつぐつと煮えたぎっているオリーブオイルだ。ほんとうは混ぜ合わせてから温めればいいのだけれど、取り敢えずそれは問題なし。今からそこに入れればいいだけだ。

 オリーブオイルをマグカップに注ぎ、アンチョビを少し、最後にブラックペッパーをかけて混ぜ合わせる。それをお店で一番小さいコンロの上にのせて弱火(とろ火、とでもいえばいいか?)に調整して温めていけばソースは完成だ。


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