エピソード57 かぼちゃのポタージュ
「かぼちゃが食べたいわね」
そう言ったのは、ミルシア女王陛下だった。
ミルシア女王陛下はいつも変なことを言う。変わった人間だった。
変わった人間と言ってしまうと、語弊があるかもしれないけれど、要するに、メリューさんを試しているのだと言えばいいだろうか。メリューさんを試すためにいろいろなリクエストを出してくるのが、ミルシア女王陛下なのだ。
女王陛下、と言っているからには、名前通り、その国の陛下を務めている。要するにとっても偉い人なので別にここに来なくても良いと思うのだけれど、何度も来ていると言うことはメリューさんの味を認めている、ということになるのだろう。
「かぼちゃ、ですか」
言い返したのは俺だった。
俺はいつもカウンターで客の案内をする。メリューさんは常にキッチンに居るので、俺が的確な指示を出さないとお客さんが喜んでくれるような料理を出すことが出来なくなるのだが。
「そう。かぼちゃ。知らないとは言わせないわよ」
「知ってますよ、勿論。冬になると美味しいですよね。で? それがどうかしましたか」
「かぼちゃって庶民の料理に使われることが多いのよね。なぜなら、庶民にとってそれが一般的な料理だと言われているから。けれど、私にとってはそれを食べてみたいと思うときがあるという訳よ。分かる?」
「分かる? と言われましても」
「かぼちゃのポタージュが美味しいかもしれないわねえ」
「おい聞いてるのか人の話」
「聞いてますよ、聞いてます。で? かぼちゃのポタージュが良いんですか」
「それなら五分で出来るぞ」
「お、メリューさん」
メリューさんがキッチンから出てきた。
「それじゃあよろしく頼むよ。かぼちゃのポタージュ。ポタージュだけじゃなくて、パンもつけてくれると嬉しいな」
「結局どのタイミングで飯を食べに来たんですか? それともおやつ?」




