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占いとラッキーアイテム・前編


『……というわけで星座占いの最下位の、今日のあなたのラッキーアイテムはバーニャカウダ! アンチョビソースに野菜をディップして、野菜本来の味を楽しんでね!』

「それってただの料理の宣伝じゃねぇの?」


 スマートフォンのワンセグ機能でテレビの占いを見ながら、俺は道を歩いていた。別に占いが好きなわけじゃない。占いはニュース番組――お笑い芸人がキャスターをしているから、どちらかといえばバラエティー要素が強い――の最後、即ちオマケで見ているものなので、あんまり気になって見ているわけではない。

 習慣で、最後まで見ているだけだ。


「バーニャカウダ、ねえ……」


 正直、そんな簡単に食べられるものではないと思うのだが。だってアンチョビにオリーブオイル、家庭にあまり潤沢にあるとは言えないものばかりだ。というか一時期バーニャカウダって流行ったよなぁ……何で流行ったんだろう?

 そんなことを考えながら、俺は漸く店の前までたどり着いた。――失礼、正確に言えば『この世界での』店の前だったな。

 目の前にある古い木の扉――それが店の入り口だった。正確に言えば裏口だ。俺のために用意された、俺専用の入り口。あまりにも特殊な概念過ぎて、俺以外の人間がこの扉を視認することは出来ない――らしい。確かめたことが無いので、正直解らない。


「こんにちはー」


 そう言って俺は扉を五回リズム良くノックする。これは『決まり』だ。視認出来ないとはいえ、万が一ということもある。それを考えると、こういうことも大事だ――メリューさんはそんなことを言っていた。

 そして俺は扉を開けた。

 異世界唯一のドラゴンメイド喫茶へと繋がる扉を――。



 ◇◇◇



 店に入ると、思った以上に静かだった。時間を併せたとはいえ未だ昼過ぎ、寝静まるには未だ早い。それともドラゴンには昼寝をする習性でもあるのだろうか――。


「そんなこと、あるわけ無いだろ」

「……メリューさん? 背後から突然姿を見せるのはやめてもらえません? 流石に肝が冷えましたよ?」

「別に驚かすつもりなんて無かったよ。……まぁ、声を上げなかったのは褒めてやる。もし少しでも驚いた声を上げていたら私はお前を殴っていた」

「理不尽。相変わらず理不尽」

「それを言うと私が毎回理不尽な言動をしているように聞こえるだろうが……。まぁ、いい。そんなことより、情報の共有をしようではないか。これによって何が生まれるか解らないが、少なくとも今の状況が瓦解することだけは防げる」

「……いったい、何が?」


 俺の質問にメリューさんは――ある一点を指差した。

 俺もその方向を向いてみる。そこに居たのは――毛布をかけられ、すやすやとカウンターの席を陣取って眠っているティアさんの姿だった。


「ああー……成る程」


 あの時の頭の回転率の速さは、きっとピカイチだったに違いない。

 ティアさんの寝相の悪さは、最悪なのだ。先ず平気で人を殴る。叩く。蹴る。嘲る。

 ……最後は「絶対お前寝ていないだろ?」とメリューさんに突っ込まれるレベルだが、彼女は寝ている間の記憶は皆無なので、質問責めしても無駄なのだった。



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