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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード50(シーズン3 エピソード21) 『いなり寿司』
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狐の恩返し・6

「お釣りを用意するのでお待ち下さい」


 まあ、ケイタもその価値に気付いていることだからあまり呵責しないことにしようか。


「いえ、大丈夫です」


 ケイタの行動を、少女は言葉で遮った。


「え?」

「……私を助けて下さった、あのメイドさんのためならば、それほどのお金は無駄ではありません」

「やっぱり、そうだったか」


 私は、気付けばその言葉をぽつりと口にしていた。


「え?」

「え?」


 ケイタと少女は同時に私の方を向いて、そう言った。

 不味かったかな。表に出るつもりはなかったのだけれど、まあそこまで気にすることでもない。今更隠れたってもう遅いし、それを気にするほど私は小心者ではない。


「……ずっと気になっていたんだよ。こんな子供がボルケイノに来たことがあったか? ってね。まあ、ミルシアとかは居たかもしれないが、でも、それは少数派だ。だから、だからこそ気になっていたんだよ。このお客さんは誰なんだ、って。普段はそんなこと気にもとめないし、プライバシーの侵害に繋がるわけだけれどね」

「なら、どうして……」

「確信があったからさ。それは、来店時には証拠なんて一つもなかったことだったけれど」


 それは、例えば『食べたいと思ったメニュー』。

 それは、例えば『最後に伝えたその言葉』。

 仕草や言葉の一つ一つから、予想は確信へと変化する。


「じゃあ、それはいったい……」

「実はさっき狐の親子に食べ物を分け与えてね。ま、おかげで昼飯を食べるタイミングをすっかり逃してしまったわけだけれど。そんで、もう一つ。確か狐には姿を変えることが出来る……正確に言えば、錯覚を見せることが出来るんだったかな? ケイタの世界にもかなりの逸話が残っていたはずだけれど」

「じゃあ、もしかして……」

「そういうこと。彼女は狐、それにしてもまさか恩返しでやってくるとはね。律儀な狐も居るものだね」



 ◇◇◇



 後日談。

 というよりも今回のオチ。

 結局、自らが正体を明かすことはなかった。けれど、やっぱりあの少女は狐で合っていると思う。いなり寿司を食べたかった、というのもその点に挙げられるだろうしね。

 余談だが、ケイタの世界でも油揚げは『きつね』のことを言うのだとか。初めて知ったけれど、実は私の世界もそうだったりする。案外常識が似通っているんだよな。……実はルーツが一緒だったりして? まあ、そんなことはないか。

 そんなことはあっという間に流れ去って、今日もボルケイノは営業するのだった。

 ……なんか、テンプレートっぽい〆だけれど、たまにはそれも良いだろう?

 私は誰に問いかけるでもなく、そう呟くのだった。



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