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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード50(シーズン3 エピソード21) 『いなり寿司』
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狐の恩返し・4

 さて。

 そんな昼飯のこともあっさりと忘れ去ってしまって、夕方まで結局誰も客はやってこなかった。

 仕方ないと言えば仕方ないことにはなるのかもしれないけれど、やっぱり暇なことには変わりない。


「……にしても、ほんとうに暇だな」


 溜息を吐いて、私はカウンターのほうをちらりと見てみた。

 暇なことはケイタも同じようで、ケイタは学校の宿題をはじめている。別にそれは悪いことではないし、私もそれを認めている。もともと暇なところだから、暇な時間は自分のために使ってしまって構わない、というのが私のスタンスだ。私、というよりもボルケイノのスタンスといったほうがいいかもしれないけれど。

 ま、それについてはあまり考えないほうがいいだろう。というか、考えたくない。普通の店で考えれば、どうしてこの店が客が一切入っていないのに継続出来るのか不安で仕方が無い状態だろうけれど、続けていけるのがボルケイノだ。というか、うちだからこそ続けていける――と言えば良いのかな。

 カランコロン。

 来客を告げるドアの鈴が鳴ったのは、ちょうどそのときだった。

 さすがにケイタもこんな時間に来客があるとは思わなかったのだろう。急いで宿題を仕舞い込みつつ、いつもの挨拶をしていた。


「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」


 入ってきたのは、和服の少女だった。紫と白のグラデーションが艶やかな和服だった。金色の髪は後ろの方で括られており、赤いかんざしが刺さっている。唇も仄かに赤い口紅が塗られていて、どこか妖艶な風貌だ。

 少女はゆっくりと歩きつつ、カウンターの席に腰掛ける。


「いらっしゃいませ。少々お待ちくださいね」

「あらあら。そんなに慌てる必要なんてありませんよ。ゆっくり作ってくださいね」


 そう言って、少女は微笑む。急にそんなことを言われたからか、すっかり話のペースは客に取られてしまっていて、ケイタはたじたじになっていた。何というか、あんなあいつを見るのは久しぶりだな。

 さてと。

 私もそろそろ動き始めないとな。お客さんの食べたいものをいかに素早く作るか。それが私の仕事だ。今はシュテンもウラも居ない。だから己の身体しか使えない状態だ。まあ、いくら従業員が増えたからといってこういう時はちょくちょくやってくる。だから普段と変わらないような感じではあるけれど。赤字なことには変わりない。残念なことに。


「さて、食べたいものは……」


 私は直ぐにその『能力』を発動させる。

 その人が、今食べたいものを当てる能力。

 ほんとうにこの能力は便利だ。というか、この能力を与えられた今の私は天職と言っても過言では無いだろう。まあ、枷はいくつかあるわけだけれど。


「……成程」


 ものの数秒で、食べたいものの解析を完了。

 それにしても偶然とは面白いものだな。さっき作ったばかりだから材料も直ぐ傍にあるし、そもそも調理に使う器具も片付けは終わっているとはいえ、直ぐに用意出来る状態だ。これならあっという間に出すことが出来るはずだ。

 そう思って、私は調理をはじめるのだった。

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