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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード50(シーズン3 エピソード21) 『いなり寿司』
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狐の恩返し・1

 私がその狐に出会ったのは、買い出しの帰りのことだった。

 狐はぐったりとしていて、子供も居る様子だった。しかしながら子供にあげる乳も出せないのだろう。親子ともにぐったりとしている。

 このままでは親子に待ち受けているのは――死。

 そう思った私は、昼飯のつもりで用意していた握り飯を二つ地面に置いた。


「母親は、子供のために栄養をつけるものだぞ」


 そう言って、私は優しく狐の頭を撫でてあげた。

 たまには優しさを見せているな、だと?

 ふざけるな、私はいつも優しいんだ。そうだろう?




 私がボルケイノの扉を開けたときには、もう昼ご飯を食べる時間と捉えるには三時間ほど遅い時間となっていた。


「メリューさん、遅かったですね。何かありました?」

「遅かった……。ああ、でもそんな時間が経過していたか。ちょっと野暮用でね」


 私を出迎えたのは店員のケイタだ。ケイタはもう長くボルケイノに務めている。彼を信頼している、といえばその通りかもしれない。留守を一人で任せるくらいには信頼出来ている。


「野暮用って、買い物では無くて?」

「女性には、秘密にしておきたいことがあるのだよ。覚えておきなさい」


 私はケイタにそう言って、キッチンへと向かっていった。先ずは購入した材料を保管しておかねばなるまい。

 因みに材料の保管場所の管理はすべて私が行っている。そこだけはあまり他人に弄ってもらいたくないものだ。それくらい、料理を作る人間なら共感してもらえるような内容だと思うがね。

 さて。

 食材保管庫はキッチンから少し離れたところにある。近いところにあれば便利じゃ無いか、って? そんなもの、私の知ったことでは無い。ここの前任者がそういう作りにしたのだから、私はそれに従うだけだ。ボルケイノも居抜きのようなものだからな。表現としては間違っているかもしれないが。

 食材保管庫は材料のカテゴリごとに整理されている。例えば調味料、例えば生もの、例えば非常用食料など、そのカテゴリは五十に及ぶ。因みにここは魔法を使って温度を低く保っているため生ものでも一日は持つ。かつてケイタが『レイゾウコみたいだ』とか言っていたが、まあ、そういえば説明がわかりやすいのかもな。

 材料をさっさと保管して、私は昼飯を作るために適当に材料を物色する。なにせもう夕方に近い時間だ。軽く口に入れておけば問題ないだろうが、それでもある程度のボリュームが無いと夜まで持たない。


「さて、どうしたものか……」


 と、ふと私の視界にあるものが入ってきた。


「そういえば、これもそろそろ食べてしまわないといけなかったか」


 と呟いたと同時に、私の中で電撃が走るかの如く、レシピが構築されていく。

 食材を持って私が保管庫を出たのは、それから数十秒後のことであった。

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