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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード49(シーズン3 エピソード20) 『肉じゃが』
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お姫様の家出・3

「……これは?」


 ミルシア女王陛下の前に定食を置くと、目を丸くして俺に質問した。


「これは肉じゃがですね。肉と馬鈴薯、それにカロットを入れています。カロットは甘くて美味しいですよ」

「へえ。肉じゃが……聞いたことは無いけれど、見たことはあるわ。これ、アルシスがよく作ってくれた……」


 アルシスさん。

 確か、ミルシア女王陛下の国、グラフィリア王国のメイド長だったか。

 もしかして、今回ここにやってきた理由は――。


「アルシスさんと、喧嘩でもしましたか。具体的には、口喧嘩を」


 それを聞いたミルシア女王陛下は目を丸くして、頬を赤くする。

 どうやら俺の言葉は図星だったらしい。


「な。な……、どうして分かったの……?」

「いや、もしかして、そうなのかな……って思っただけですよ。ほんとうに、そうなんですか?」

「それは……。うん、まあ、そうね」


 馬鈴薯を口に入れて、何度も、何度も、その味を噛み締めながら頷くミルシア女王陛下。

 そしてその余韻が残っているうちにご飯を一口。味について何らかの感動を覚えているのかもしれない。目を瞑りながらうんうんと頷いている。

 そして、少しの間を置いて箸を置く。


「……あんたの言うとおり。私、アルシスと喧嘩をしたの。些細なことでね。なんで喧嘩したかを教えることすら笑っちゃうくらい」




 それから、ミルシア女王陛下はぽろぽろと喧嘩した理由をこぼしていった。それから、喧嘩してからどうしてここにやってきたか、についても。


「私ね。自分の国以外何も知らないのよ。確かにあの国はずっと戦争を続けている。けれど、それだけなのよ。他国との交流は私がやっているけれど、それも儀式的なものばかり。きちんとしたものは大臣が行っているから。もちろん、内容は理解しているけれど、大臣はいつも私のしていることにしゃしゃり出てきて……。だから、私は自分の国のことしか知らない。きっとそれは大臣の優しさなのかもしれないけれど」

「自分の国からも逃げたくて……。そして、その場所が、」

「ボルケイノしか、無かった」


 ここを選んでくれるのは、ボルケイノの店員という立場からすれば有難いことだと思う。

 けれど、普通の人間としてミルシア女王陛下と接してみると、それはまた違う考えとなる。


「……仲直りしたら如何ですか?」


 俺は気がつけばその言葉を口に出していた。はっきり言ってそれはタブーに近いこととも言えるだろう。他人同士の仲に口を出すのは、あまり良いことではないだろう。それは俺が怖い物に触れたくないから、という自分勝手な都合があるからかもしれないけれど。

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