表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード45(シーズン3 エピソード16) 『肉まん』
166/254

倉庫の掘り出し物・後編

 一口大に菜っ葉を千切ってそれを肉まんの上に載せる。そして、菜っ葉が落ちないように慎重にそれごと口に運んだ。

 口の中に広がるのはさっきの味付け――だけではなかった。ピリリと辛さが効いていた。


「これってもしかして、からし菜……?」

「その通り。からし菜という名前はあなたの世界で使っている名前だったかしら。こちらでは、『アクタナ』と呼ばれているよ」


 アクタナ、か。

 聞いたことは無いけれど、きっとからし菜と同じ類なのだろう。

 それにしても想像以上に辛さが効いている。そういえば、肉まんにからしをつける食べ方もあると聞いたことがあるし、ミルシア女王陛下が言っていた食べ方とはそのことを言っているのかもしれない。もっとも、辛子(いわゆる粉辛子や和辛子)とはまた別の食べ方になるのかもしれないが。


「どうだ? アクタナは美味しいか。これは因みにここの庭で採れた奴だ。家庭菜園、というやつだな」

「家庭菜園……そういえば昔そんなことを言っていましたよね。今って誰が管理しているんですか? ほら、ボルケイノの普段の一日じゃ、家庭菜園を管理する時間なんて見つからないですよね」

「そりゃあもう……」

「私たち!」

「二人でーす!」


 メリューさんの後ろからひょっこり出てきたのはシュテンとウラだった。


「二人があの家庭菜園を管理しているのか」


 俺はシュテンとウラを見て、ゆっくりと頷いた。

 シュテンとウラの手にも、俺が持っているのより一回り小さい肉まんがあった。どうやら俺よりも早く――ほんとうの一番手として試食しているようだった。

 まあ、別にそれについてはどうだっていいのだけれど。


「最近シュテンとウラを営業中に見かけないな……と思っていたけれど、まさかそんなことをしていたなんて」

「えへへ」


 俺の言葉を聞いて、恥ずかしいのか笑みを浮かべながら頭を掻くシュテンとウラ。

 再びアクタナを千切って肉まんと一緒に頬張る。これがあると無いとでは話が違う。普通にそのまま食べれば辛味が出てしまうのだろうけれど、肉まんの脂がそれを中和してくれる。そして辛味は脂を中和するから――ちょうどうまい具合に、爽やかな感じになるのだ。

 そうして気が付けばあっという間に肉まんが手の中から無くなってしまっていた。


「メリューさん、とても美味かったです」

「……もっと食べたいのでしょう?」


 メリューさんの言葉に、俺は顔を上げる。

 メリューさんは悪戯っぽく笑みを浮かべ、ウインクする。メリューさんの前にある蒸籠は今も蒸気をあげていて、甘い香りを漂わせていた。どうやらいつの間にか肉まんを蒸かしているらしい。


「まだ作っていた分はあるからね。幾らでも食べていいよ。ただ、ちょっとだけ時間はかかるけれどね」

「それならぜひ、お代わりをください」



 ――そのあと俺が合計三つ肉まんを頬張ることになるのだが、それはまた別の話。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ