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ボルケイノの地下室・5

「今を大事に生きるのだよ。……若人には判らないかもしれないが、人間とは常に今がピークの状態だ。それを保持し続けることなど出来ない。だから、今を楽しく生きていけばいい。……まあ、それも難しい話なのかもしれないが」

「そうですね……」


 正直言って、その言葉に簡単に答えることはできなかった。

 というか、どう答えればいいのか直ぐには思いつかなかった。

 男性は笑みを浮かべて、どこか遠いところを見つめつつ、


「まあ、別にいいことだ。少年よ、強く生きろよ」


 そう言って――俺の答えを待つことなく、男性は消えてしまった。



 ◇◇◇



 後日談。

 というよりもエピローグ。

 そのあと俺たちは結局メリューさんがほしかったものを地下室から探し出すことはできなかった。だからメリューさんからカンカンに叱られた。全然帰ってこないからどこに行ったかと思った、と言っていた。まあ、そんなメリューさんは厨房で調理の続きをしていたわけだけれど。


「でも、メリューさん。地下室の倉庫には何もなかったんですよ? いったい、どこのことを言ったんですか?」


 俺は、メリューさんの怒りが収まったタイミングで質問した。

 はあ? とメリューさんは呆れたような声を出して、話を続けた。


「お前はいったい何を言っているんだ。私がサクラに探してきてくれとお願いしたのは、普通に店の奥にあるいつもの倉庫……それこそケイタにも探しにお願いしているところだし、そもそも地下室なんてこのボルケイノには無いはずだぞ?」

「……え?」

「いやいや、メリューさん。噓を吐かないでくださいよ! 私たち、ほんとうに……!」

「ここに長年暮らしている私が言うんだ。間違いない。さあ! 急いでもともとの倉庫から探してきてくれ。開店時間までもう時間はないぞ!」


 メリューさんにそう言われてしまっては仕方がない――そう思って俺とサクラは再び倉庫、もちろんそれは別の倉庫の話だが、へと向かうことにした。



 ◇◇◇



 さて。

 ケイタたちも居なくなったか。

 それにしても、地下室……ねえ?

 あの地下室は確か、私がボルケイノに入って直ぐ埋めたはずだったけれど。

 理由?

 それは簡単だ。……とはいっても、その理由を作ったのは私ではなくティアだけれどね。

 あの地下室は、オーナーが眠っている。オーナーと言っても今のオーナーではない。このボルケイノを一から作り上げた、初代。創業者といってもいいだろう。

 その創業者は道半ばで亡くなった。心臓の病だったらしい。そして、死ぬ前に――こう願ったのだという。

 もし可能であれば、自分の夢を引き継いでくれる人間に出会いたかった、と。

 ……それからは、想像に難くないはずだ。

 ティアがその意思を引き継いで、店とともに死にたかったというオーナーの墓を地下室に作り出して、オーナーをそこへ安らかに眠らせた。そしてその場所は誰も入ることのできないようになっていたはずだが……。もしかしたら、それはオーナーの力だったのかもしれないな。今のボルケイノがどうなっているのか、この目で確かめたかったのかもしれない。

 それがどこまで本当なのかは、読者諸君に任せるけれど、ね。

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