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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード38(シーズン3 エピソード9) 『クッキー』
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トリック・オア・トリート? 後編

 それにしても、かぼちゃのクッキーか。

 うん。とっても甘くて美味しい。しかもその甘さというのは自然な甘さだというのがなおいい。


「昔、チョコチップクッキーをあなたにご馳走したのを覚えているかしら?」


 メリューさんは俺の前に立って、そう言った。

 確かに少し昔の話になるけれど、そんなこともあった。そのときは未だ店員が俺とメリューさんとティアさんしかいなくて、とてもあわただしい毎日だったのを覚えている。

 そんな時に、メリューさんが急に店を閉めた。

 その時に俺に手渡されたもの――それがチョコチップクッキーだった。


「……ええ、覚えていますよ。あの味、今も忘れられません」

「そうか」


 メリューさんは一拍置いて、俺の言葉に頷いた。


「……まあ、色々とあった。ケイタにも迷惑をかけた。……だが、今は続けられてとても嬉しいよ。色々と楽しいことが増えたからな」

「そう言ってもらえて嬉しいですよ。あの時俺も引き留めた甲斐があったってものです」

「たしかに……な」


 メリューさんは何か思い出したかのように、俺に問いかける。


「そうだ、ケイタ。……私にコーヒーを淹れてくれないか? たまにはお前の淹れたコーヒーが飲みたくてね。いいだろう、別に悪い話じゃない」

「コーヒーですか? だって、ミルクティーがあるんじゃ……」

「空気を読め、ケイタ」


 そう言ったのはいつの間にかメリューさんの隣に立っていたティアさんだった。相変わらずハードカバーの本を読んでいる。


「ティア、いつの間に……!」


 どうやらメリューさんが呼んだわけではないようだ。

 となるとティアさんが勝手にやってきた、ということか。何というか、性格が悪い。


「私のことはどうだっていい。……ケイタ、あなたはこの状況でコーヒーを淹れない、ということ? だとすればそれはあなた、メリューに対する冒涜と言っても過言ではない。いえ、冒涜よ。はっきり言ってしまったほうがいい。それは少し前に学んだことだからね」

「……、」


 二対一。

 はっきり言ってこの状況で口論をするつもりはない。何故なら、負けてしまうのは目に見えているからだ。

 そう思って俺は、コーヒーを淹れるべく――正確に言えばその前に制服に着替えるべく――カウンターの裏へと向かうのだった。




 結局そのあと、メリューさんにコーヒーを注ぐのがサクラたちに見つかってしまい、全員にコーヒーを淹れることになるのだが、それはまた別の話。

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