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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード37(シーズン3 エピソード8) 『あんかけスパゲッティ』
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定休日のお客さん・後編

「んぐっ。うーん、美味しいよ。私も結構前に食べたきりだったから、その味を思い出して何とかメリューさんに伝えた形になるのだけれど……、このピリっときいた辛味は確かにあんかけスパゲッティそのものだと思うね!」


 そう言っていた桜の表情は笑顔だった。はっきり言ってしまうが、こんな笑顔は滅多に見たことが無い。要するに、一番の笑顔と言えるのかもしれない。実際のところ、こんな笑顔を見たことが無い俺もまだまだだな、って思うのは正直な感想だけれど。

 それはそれとして。


「……それにしても、このスパゲッティ、何か独特だよね。秋葉原にあるなら行ってみようかなあ……」

「そうだねえ、今度休みだし……。ね、ケイタ」


 うん? と俺はそちらに顔を向けると、桜は俺の顔を見つめていた。


「一緒に行かない? そのお店」



 ――俺はそれを聞いてただぽかんとするばかりだった。



 そのあとの勉強について、あまり身に入らなかったことについては、まあ、言うまでもないだろう。



 ◇◇◇



 後日談。

 またの名を、蛇足とも言う。

 結局それから秋葉原のあんかけスパゲッティ屋へ向かうことが出来たのは、それから一週間後のことであった。定期試験を赤点ギリギリで切り抜けて、その祝いということで向かうことになったというわけだ。

 秋葉原駅に降り立った時、あまりの人の多さにちょっと酔ってしまいそうだったが、何とか気力を振り絞ってそのお店がある場所へ向かうこととした。

 ……結論から言って、そのお店は閉店していた。それも数年前に。それをスマートフォンか何かで調べればよかったのに、調べなかったのが運の尽き、だろう。まあ、それについては悔やんでも仕方のないことだった。


「……しょうがないね、こればっかりは」


 桜は俺の顔を見てそう言った。どうやら俺はそれほど悲しいことを表情に出していたのかもしれない。

 俺は全然辛くなんかない。それを伝えて、その場所を後にするのだった。

 実は桜とのデートが一番嬉しいことだということについては、その時の桜には到底言える話では無かったのだけれど。






 実はこの後日談にはまだ続きがある。

 その次の日、俺がバイトで桜が休みの日。メリューさんが洗い物をしている俺に向かってこう言ったのだ。


「デートはどうだった? ケイタ」


 あまりに単刀直入過ぎるだろう、と思ったけれど、


「デートじゃないですよ、それに、いつ言いましたっけ?」

「あれ? サクラから聞いたぞ。二日前に、明日ケイタと食事しに行くんだ、って。とっても楽しそうな表情を浮かべていたけれど。まあ、その様子だとあまり楽しそうではなかったようだが」

「そんなこと」

「……ケイタ、一応言っておくが……、女はそういうことには敏感だぞ」


 そう言ってメリューさんは厨房に消えていった。


「心に留めておきます」


 俺のその言葉が、メリューさんに聞こえたかどうかは解らないけれど。


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