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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード37(シーズン3 エピソード8) 『あんかけスパゲッティ』
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定休日のお客さん・中編

 皿の上にあったのは、赤いソースの海だった。そしてソースの海の中心にはスパゲッティで出来た島がある。ソースの海にも卵にウインナーなど浮遊物(言い方は良くないかもしれない)が多数浮かんでいて、とてもボリューミーな感じになっていた。

 いったいこれは何という料理なのだろうか――見たことのない料理だけれど――そう思って、俺はメリューさんに問いかけた。


「メリューさん、これって……」

「これって、あんかけスパゲッティですよね」


 俺の質問よりもいち早く反応したのは桜だった。桜はずっとこの言葉を言いたかったのか、今もうずうずしている様子だ。ははあ、もしかしてさっき、向こうでこのやり取りをデモンストレーションしていたな?

 そんなことを考えていたが、答え合わせなど出来るはずがない。案外桜は恥ずかしいことが嫌いな人間なので、そういうことを指摘すると逆切れされかねない。面倒ごとは可能ならば避けてしまいたいのが俺の主義だ。


「あんかけ……スパゲッティ?」

「文字通り、太麺のスパゲッティにあんをかけたものだよ。……とはいっても全国区じゃなくて、名古屋限定らしいね。私も名古屋の知り合いに教えてもらってからはまっちゃって。まあ、名古屋に行かなくても秋葉原にそういうお店があるからね」

「……サクラ、お前はいったい何を言っているんだ……?」

「ああ、ごめんなさい。メリューさん。私とケイタの住んでいる世界の話です。……まあ、それはそれとしてケイタ、食べてみましょうよ。私が、メリューさんにリクエストしてみたの。どういう味付けかということから、どういう材料を使っているか、というところまで!」

「サクラから聞いた情報と『食べたいものが見える』ヤツで得た見た目だけで作ったから、もしかしたら少し変になっているかもしれないが、それについてはご愛嬌ということで許してくれ。私も食べたので、それから感想を言ってもらえれば私も何とか改善していこうではないか」

「……解りました」


 桜と俺の分が運ばれて、桜が俺の隣に腰掛ける。

 そうして桜は俺にフォークを差し出した。有難く受け取ることにして、両手を合わせる。


「それじゃ……、いただきます」


 そうしてソースに絡んだスパゲッティをフォークで掬って、口の中に入れた。

 直ぐに広がったのは、辛味だった。マキヤソースベースの味付けに、唐辛子が入っていると思われるその辛味、コク、正直言って本物を食べたことはないが、あんかけスパゲッティってこんなものなのか、と思ってしまうくらいだった。

 ところでほんとうにこれは本物に近い味付けなのか――と思って僕は隣にいる桜を見つめる。

 桜はずっと食べていた。スパゲッティを掬って、それを口に運ぶ。ある程度咀嚼をして、飲み込んだらまたスパゲッティを掬う。その繰り返しだった。


「……なあ、桜。どうだ、このあんかけスパゲッティは? 本物を食べたことが……、あるんだよな? 桜は。だから、どうかな、って思うのだけれど。俺は食べたことがないし」

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