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遣らずの雨・承

 と、その時だった。

 再びカランコロン、と音が鳴った。鈴の音が鳴ったということは、客が来た合図だ。それにしてもこんな雨なのに客がこうやってくるとは――え?

 そこに居たのは、もう、目を丸くするレベルだった。

 だって、そこに居たのは、蒼を基調とした鎧、兜、赤いマント、身体の半分程はあるだろう剣――見るからに勇者風の格好だ。

強いて言うなら、性別が女性であるが――まあ、この際気にしない。某勇者が銅の剣と五十ゴールドで仲間三人と自分の態勢を整えろと国王に言われる系ロールプレイングゲームでは、確か勇者は女性も選択出来たはずだ。


「いらっしゃいませ」


 頭を下げる俺。たとえ客が勇者であろうとも、それは変わらない。


「ああ、ここは食事処か。それにしてもまさかあんな僻地にあるとは……」


 同時に魔王はマントをパーカーのように帽子代わりにした。

 まあ、なぜそうしたか――理由は単純明快だが。


「ここ、いいですか」


 勇者はくしくも魔王の隣に腰掛ける。


「……ああ」


 さっきよりトーンが低い魔王。もしかして、魔王と勇者は一度会ったことがあるのだろうか。だからそのように声を低くしているのかもしれない。


「ところで、メニューってあります?」

「このお店は、あなたが一番食べたいものを作っています。提供まで少し時間を要しますが、暫しお待ちください。何を飲みます?」

「酒ってある?」


 二言目に酒を言い出すあたり、女性だけど勇者なのかもしれない。

 まあ、酒はある。いろんな世界から集めた至極の酒コレクション。これもメリューさんが実際に飲んで確かめたらしい。ほんと、すごいドラゴンだ。

 取りあえず言われたので酒を出す。一応メリューさんにも確認を取る為、厨房へと向かう。


「酒でしょ。いいよ、別に。とびっきりうまいものを出してあげなよ」


 即答だった。

 まあ、そこまでは予想通りだった。

 許可を貰えたことだし、質問をしよう。


「酒はそのままで?」

「……というと?」


 ほら、食いついてきた。ついでに隣に居る魔王も。仲良しか、お前ら。


「割り方があるんですよ。正確に言えば、飲みやすくすると言えばいいですかね。一番のオススメはカルーアミルクですよ」

「カルーアミルク? なんだそれは」

「珈琲のお酒に牛乳を入れたものです。飲みやすくて、とても美味しいですよ」


 それを聞いて勇者は笑みを浮かべる。


「成る程、それをいただこうか」

「ついでに私も頼む。甘めでな」


 おい、魔王、お前は甘党か。

 魔王の威厳、ガタ落ちだぞ。

 でもまあ、そんなこと今の魔王には関係のないことなのだろう。きっと。

 取りあえず俺はカルーアミルクを二人分作る為、冷蔵庫からカルーア――コーヒーリキュールのことだ――を取り出した。これをグラスに注ぎ、牛乳で割ることで完成――。いたってシンプルな構成だ。

 お待たせしました、と言って俺は二人分のカルーアミルクをそれぞれの席に置いた。


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