羊使いとプリンアラモード・4
「……これ、すごい技術だな」
俺の世界でいうところの、ドライアイスだろうか。とにかく、そのような冷たい空気が出てきた。
リーサは驚くことなくそれを見つめて、
「へえ、氷冷魔法を箱に閉じ込めている、ということかな。それにしてもどういう技術を使っているのだろう。もしかして……あのキッチンにそれを作れる装置でもあるのかな?」
「そんなこと俺に質問しても知るわけがないだろ。俺だってあのキッチンには数回しか入ったことがない。あのキッチンの設備をすべて知っているのは、メリューさんとティアさんくらいだからな」
「ほっほ。まあ、そんなことはどうだっていいのではないかね。その中には何が入っているのか、先ずはそれを解決すべきでは?」
確かに。ヒリュウさんにそう言われて俺は箱の中から何かを取り出した。
中に入っていたのは――プリンアラモードだった。
プリンを中心にホイップクリーム、イチゴ、プレッツェル、キウイ、オレンジがきらびやかに盛り付けられている。毎回思うけれど、メリューさんは幅広いジャンルで完璧にこなすんだよなあ、まさに料理チートとでも言うべきか。
「おお、プリンアラモードじゃないか。これを配達してくれるとは、メリューちゃんも隅に置けないなあ」
そう言っていたヒリュウさんの表情はとても朗らかなものだった。
箱の中にはスプーンやフォークも入っていた。用意周到だな、と思っていたが最後に手紙まで入っていた。
「……何だろう、この手紙?」
俺は疑問に思って、綺麗に四つ折りにされていた手紙を、ゆっくりと開いていった。
「ええと、なになに? 『この容器はボルケイノのものだから、食べ終わったら水洗いしておくように。洗わなかったらケイタの給料からその分天引きしておくのでそのつもりで』……、そんなことお客さんに渡すものに入れておくなよ……」
「ほっほ、まあ、彼女らしいのう。まあ、後で洗い場を貸してあげよう。先ずは休憩とでも行こうではないか。……君たちが問題なければ、の話だが」
俺はその言葉にゆっくりと頷いた。
時刻は未だ昼過ぎだ。とはいえ、ボルケイノの時間軸ではあまり関係ないけれど。
そういうわけで俺とリーサも、ヒリュウさんと同じくプリンアラモードを食べることにするのだった。
◇◇◇
プリンアラモードの味は格別、と言っても過言では無かった。
ヒリュウさんはいつもプリンアラモードを食べている。そういえば初めにボルケイノにやってきたときは、『食べたことのないデザートが食べられると思ったが』ということだった。確かにここは喫茶店だし、ご飯ものよりかはデザート、になるだろう。そういうわけでヒリュウさんは普通にご飯を食べてから、プリンアラモードを食べることとした。そして、そのプリンアラモードを食べて、その味に虜になった。