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(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~  作者: 巫 夏希
エピソード33(シーズン3 エピソード4) 『あんかけカツ丼』
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夏バテ防止の秘訣・後編

 それにしても、味付けもしつこくさせすぎず、かといってあっさりしているわけではない。こってりとした味付け、とでも言えばいいだろうか。いずれにせよ、今まで俺が食べてきたなかであまり食べたことのないような味付けだったことは言うまでもない。


「……ほんと、こういう時になるとお前が料理に集中しているな。まあ、別にいいことなのだが。そう美味しく食べてもらえるとそれはそれで嬉しいものだよ」


 そういってメリューさんも食べ始める。

 メリューさん曰く、あまり自分の料理は好きではないとのこと。何故なら、こういう賄いや日常でも食事を作っているかららしい。まあ、常に作っているから食べたいモノとか、食べたくないモノとか全部自分で把握できてしまっているから、なのだろうけれど。

 そのために、飽きが来ないために、メリューさんは毎日挑戦し続けているのだという。チャレンジというよりもアレンジに近いらしいが。


「うむ……。今回は七十五点だな、まあまあと言ったところか。それにしても、このサクサク具合は堪らないな。見た目さえ良ければ、メニューに正式採用しても問題ないとは思うのだが……」

「やっぱり、出来ないんですか?」

「見栄えが良くないからなあ……」


 顎を撫でながら言うメリューさん。そうならば仕方がない。

 しかし、ただそれだけで賄いだけのメニューになってしまうのは非常に勿体ない。出来れば、正式メニューにしてもらえればもっといろんな人が楽しめると思うのだけれど。


「でも、結構美味しいですよ。あんまり、別の世界の人たちもやっていないと思いますし、珍しいものだとは思いますけれど」


 もちろん、このお店のメニューは『お客さんが今一番食べたいモノ』だということは重々承知の上だ。

 メリューさんはずっと悩みながら、ご飯を食べていた。

 その光景を見ると、リクエストをした俺が何だか申し訳ない気分になってしまったけれど、もう今さら謝っても無駄なような気がした。



 ◇◇◇



 後日談。

 というよりも今回のオチ。

 あの後、結局メリューさんからメニューをどうするか聞くことができなかった。解答を聞くことができなかった、ということだ。まあ、メリューさんにメニューの決定権があるので、あまりどうこう出来る話ではないのだけれど。

 というわけで今日も今日とてボルケイノの仕事だ。皿洗いにコーヒーの提供、お客さんが居ないときには店の掃除も行う。

 今日もミルシア女王陛下がやってきたので、いつものようにコーヒーを入れて少し待っているとメリューさんからおよびがかかった。


「出来たぞ、持っていけ」


 そこにあったのは、この前賄いで食べたカツ丼だった。

 ああ、そういえばミルシア女王陛下の要望は「サクサクとしていて、じゅわっとしていて、なおかつしつこくない食べ物」とか言っていたか。もしかして、それを上手くカバー出来ると思ってこれにしたのか。


「……何をぼうっとしているんだ、急げ。料理が冷めてしまうだろ」


 俺は心の中で頷きながら、かしこまりました、と言って料理をトレーに乗せるのだった。

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