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鬼の少女と悪の組織・6

 少女――シュテンとウラはずっと二人で育っていた。母親と父親を早くに亡くした彼女たちは、若くしてその身体を売られることとなった。大人に売られた彼女たちは、結局のところ男の食べ物にされるのだった。それは彼女にとって許せないことだったが、しかし物心ついたころには既にそうなっていたので、彼女たちにとって改善策がまったく考え付かなかった。


「……私たちはずっと、苦しんでいた。悩んでいた。世界なんて必要無いと思っていた」

「まさかとは思うが……、その、やられていた……というのは」

「人間ですよ」


 想像通りの回答を、シュテンは言った。


「ただ、それだけで……と思うかもしれません。けれど、私たちにとってそのことは最悪なことでした。けれど、私たちには知り合いがいませんでしたから、何もできなかった。ただ毎日、人間の玩具にされるだけだった。されるがままに、身体を弄ばれるだけだった」

「……だから人間に反抗の意思を示そうとして、今回のテロ行為を働いたのか? それとも、弄ばれるような社会が嫌いだった? 変えようとしていた? ……まあ、いずれにせよこれだけは言える。自分たちが変わろうとしないで、世界を変えようとすることはそう簡単なことじゃない。にもかかわらず、テロとかそういう身勝手で自分勝手で身の程を弁えないような行為で変えるようなことなんてできるわけがない。少しくらい、考えてみれば解る話ではあると思ったが」

「そんなことは……実際に私たちのような経験をしたことがないからこそ言えるんです」


 シュテンはそう言った。

 涙を流しながら、彼女は顔を真っ赤にさせながら、そう言った。

 けれど、メリューさんの視線は冷たい。


「経験をしたことがないから? 何を言っている。何も私のことを知らないくせに、よくそのようなことが言えるな。……それはここで言うところでは無いか。とにかく、言い分はそれで終わりか? まったく……よくそのような幼稚な理屈でテロ行為を起こしてくれた。おかげで私の作った料理が台無しだ」


 そう言ってメリューさんは頭を掻いた。

 これからどうすればいいのか――そんなことを考えているようにも見えた。

 そして、メリューさんはシュテンとウラを見て大きく頷いた。どうやら何か考え付いたようだけれど……はっきり言って、ちょっと嫌な予感しかしなかった。

 そして、その嫌な予感がほんとうに的中するまで、少しだけ時間を要することになるのだけれど――今の俺には、何も解らないのだった。


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