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亜人会議 当日・後編

 鬼の少女はパーティー会場を歩いていた。

 つまらない、つまらない、つまらない。

 そう思いながら、雑踏を抜けて、ただ目的を持たずに、歩いていた。


「ほんとうに……つまらなくて、そしてくだらない」


 少女は持っていた御猪口を傾けて、酒を口の中に入れた。

 そもそも、鬼は元来大酒飲みと言われている。だからこの程度の酒で酔うことは無い。今彼女が飲んでいるのはあくまでもパーティー会場に馴染むためのものだった。


『聞こえるか、「シュテン」』


 声が聞こえて、頷きつつも、


『ああ、聞こえるよ。「ウラ」。それにしてもこの会場は辛気臭いねえ。楽しいものばかりではないことは重々承知していたけれど、それでも、裏には欲望が渦巻いている。面倒な場所であることには間違いないけれど』

『それを我々が変えるんだよ、シュテン。そんな面倒なことを考えなくていい、新しい時代を作り出す。そのためにも……』

『解っているよ。偉い人を捕まえればいいんだろ。けれど、どうすればいいかなあ……。見た感じ、偉い人はボディーガードがたくさんいてさあ、非常に面倒なんだよ』

『そうだよなあ……。流石にお前だけじゃ厳しいだろう。それじゃ、人間はどうだ? 確か、今回のシェフは人間を引き連れていると聞いたことがある。そいつと取引だ。うまくいけば人間の国との戦闘を恐れている国だっているはずだ。うまく強請ることが出来るかもしれない』

『それ、いいアイデア。けれど、人間……。ああ、そういえばさっき居たっけ。ちょっと待っていて。また、進捗があったら連絡する』

『了解』


 そうして少女――シュテンは念話を終えて、再び人間のウェイターの前に立つ。

 先程、少女に酒を提供したウェイターだった。


「どうされましたか?」


 ウェイターは何も知らずに、彼女に語り掛ける。

 笑みを浮かべたシュテンはそのまま彼の背後に回ると、首元に凶器を突きつける。それはナイフだった。ナイフとはいっても人間の国で売られているような代物ではない。人間程度であれば簡単に肌を切り裂き、殺すことの出来るアイテムだった。

 そして少女は、耳元で語り掛ける。


「歩け」


 ウェイターはその指示に従い、ゆっくりと歩き出す。

 周りに居た人々は雑踏と声でそのやり取りが聞こえることが無かった。気付く相手すらいなかった、ということが正しいかもしれない。

 彼らがそれに気づいたのは、ウェイターとシュテンが壇上に上がった段階だった。

 これから何か起きるのだろうか、と思った相手が殆どだったかもしれない。

 それでも全員が反応を示したわけではなく、まだ会話を続けている亜人ばかりだったが。

 そして、シュテンはマイクにそっと口を近づけて、言った。


「はい、注目。会話をしているところ申し訳ないねー。けれど、ちょいとみなさんに話したい事があるんだよ。私たち、『鬼神同盟』っていうんだけれど、知っているかな。名前だけ聞いて理解できた人は超一流! ……ま、それはいいか。取り敢えず、これだけ言わせてもらいますねー。私たち、この会場をただいまから乗っ取りました! 要求? そんなもん、あんたらに言う必要はねーよ、取り敢えずあんたらは私たちの命令に従え、って話。従わないと殺す、以上」


 その言葉のあと、会場の空気は一瞬にして変化を遂げた。


エピソード28 終わり

エピソード29 に続く。

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