第二形態
戻ってきた。
長かった。天国でギミックを解除して地獄でキーアイテムを集めてみたいな冒険がしばらく続いて大変だった。
「うん。見たことある階だ!王国に戻れるルートだな!」
彼女は、噴水から出たら正気、ではなく狂気を取り戻し姿も見る間に勇者ムチムチへと変わっていった。
「わはははははは!すまんかった!忘れてくれ!王と国とその宝石達の守護こそ、我が使命。放り出すなどあり得ぬ!」
こっちの言葉も掛け値なしに本音なのだろう。
「あと、ハーレムばっちこいだぞ!!」
うーん、価値観の相違。ムチムチと彼女でそこは矛盾しないのだろうか。
「しかし男なんて王かパパス位しか居ないんだぞ?独占は出来んだろう。あれ?パパスって王じゃ無かった?おお!我が王!」
それ違う。ちゃんとしたパパスの方だろ。忠誠と愛情ごちゃ混ぜに迫ってこないで。怖いから。
落とし穴の所まで戻ってこれた。戻ってきたと言っても落ちた先の所に、なのでこっから別ルート回って上にいかなきゃならんが。
穴の向こうを仰ぎ見る。どんだけ高いのかわからないが、本当に点のようにポツンと見えるだけで、・・・こっから更に上るのか。
げんなりと見上げていると、何かが穴から落ちてきた。そのまま二足で着地。爆風を起こして出てきたのは炎をまとった、多分、大ボス。
「アチャラナータとかだろどうせ!」
「あ、正解だぞ!流石パーパ!」
降三世明王風の中ボスであんな強かったんだ。勝てるのか?
慌てて犬の姿になり、ムチムチを詰めて回避行動をとる。
冷や汗かいて避けている内にしかし、この敵に違和感を感じた。何か、片手落ちのような。
大ボスは剣から炎を纏った龍を出すが、それは良く良くみたら体が半分に削れており、全身があれば避けきれなかった攻撃も安全に対処できた。
手に持つ縄が独りでに拘束してくるが、どうにも脆く、少し暴れるだけで簡単に引きちぎれた。
避けつつ反撃する度、弱っていく大ボス。ゲーム的には何かの演出なのだろうか。例えば第二形態があるとか。降三世の方が強くなかったか?いや、攻撃が一方的に効かない特殊なタイプだったのが俺に刺さっただけか。これならムチムチの一撃でさらっと終わりそうである。
同じ判断をしたのか、隙を見て飛び出し、ムチムチがボスに一撃を加える。
ガキンと、剣が首の横で止まる。ボスは微動だにしなかった。血の一滴も皮の一枚も奪えず、ムチムチの動きがとまる。
「むっ歯が立たないぞ!ヤバい!これは死ぬかもしれん!」
今度はムチムチの攻撃が効かないのか!?そのまま、ボスの、纏う炎のためか溶けかけ気泡の浮く剣が彼女に迫る。
「む、覚醒でもしたんですか。私のピンチに。私の為に。パーパ?」
気付けば俺は雷の塊みたいになって、枝を伸ばすようにムチムチを絡めとりつつ、ボスを高くぶち上げていた。本当に覚醒したみたいになって、ちょっと恥ずかしい。
ヒーローに、勇者に憧れていた年頃みたいには素直になれない。ムチムチは違うんだろうが。
都合が良いので雷モードのまま落とし穴の真上へ戻り、ボスを噛み砕いて倒す。
レベルアップでもしたのか、やたら力が漲る。・・・本当に覚醒したのかね。
「おや、種。落とし胤になったかと思えば直ぐ立派になって返り咲いて。忙しないですね」
「おー、目がチカチカするよっ」
そこには仲間達、家族、が。犬モードになって側に着地する。王国の女性陣が警戒して武器を構える。
「もしかして、落ちてからそんなに時間経ってない?」
ガルバがじっとムチムチを見た。
「なるほど、落ちてからけっこう時間経ちましたね?」
ムチムチはおもむろに俺に跨がり、警戒する王の宝石たちに、「これなるは勇者ガルバの父である。安心されよ。そして私、勇者ムチムチのパーパになった。私も安心」と宣っており、見事、「なにいってんだコイツ?前者はいいとして後者」って顔をされていた。本当になにいってんだコイツは。




