カミナリキック
「勇者ガルバの父たる主も雷魔法を使えるのですか?勇者の父親ということですか?」
いや、使えるけども、どちらかといえばガルバの魔法はシャチ由来ではなかろうか。
「つまり、母親が勇者の家系ということですな?」
急にガルバが俺由来のカミナリキックを発動してモンスターを蹴散らした。どうした急に。というか、使えたんだな。初めて見たんだけどお前が使うの。
「両親が勇者?続編決定だ!」
何なのだろう。何が彼女の琴線に触れるのだろう。俺の犬琴線のように勇者にもあるのだろうか。鼻息が荒い。
「12才の時にここに来て、そのまま8年ですからね。中身は子供のままなのです」
そういうものなのか。そういうものだな。周りの影響を受けて大人になっていくのだろうし。
「ここでは彼女は異物ですからね。コミュニティにも入れず、勇者として祭り上げられてここで生きているのです」
12才の子供が、か。痛ましいな。いや、周りに人間がいただけマシなのだろうか。ほとんど畜生として生きていた俺は良いとして、短期間かもだが孤独に殺し合ってたセガと、大勢の中で孤独だったムチムチとでどちらが辛いのだろうか。てか、ムチムチってなんだよ。気が抜ける名前だな。
「そうですよね。名前は大事です」
ガルバがすごいこちらを見ながら言った。なんか、その、ごめんなさい。
「雷使いがこれだけいれば安心だ!桃狩りは毎回死人が出たものだが、これで鬼どもを追っ払えるぞ!」
おー、と武装したオアシス王の娘たちが応える。年頃の娘さんが、血のこびりついた鎧を着ているのはキツイものがあるな。布切れを何枚も重ねただけの人もいるし。ムチムチ含め朗らかにみんな笑ってるのがまた。
「12才の時にここに来て、そのまま8年ですからね。あなたが想像するような二十歳相応の情緒はありませんよ。ほぼほぼ現地人の価値観で生きているので」
ああ、死生観とかが割りとあっけらかんとしているのか。
「そうですね。価値観が違う。努々、気を許さぬよう。いつかきっと、あなたを裏切りますよ。悪夢のような時機に」
急にどうしたというのか。ムチムチの記憶から何か読み取ったのだろうか。なら何故こんな狭苦しい迷宮に一緒に降りたというのか。モンスターは楽勝らしいが、娘たちがやっかいと言ったのはそれ関係なのか?信頼やら得るのに年単位かかると?
うわぁ。人間、面倒くさいな。帰りたいな。最初の山あたりに。




