止まり木
宣言どおり丸一日パーティーだった。これまでとはレベルが違った。
「レベルもあがった。前衛・前衛・前衛のナイスバランスなパーティーがいる!だからダンジョン行こう!レアアイテム!レアミディアム!」
あるのかダンジョン。
「ザコが強すぎて入り口で断念してたんだよね。あー!楽しみだなあ」
「経験はたまりますが、これ以上パーツは増えないようですしね。どんどん初体験していきましょう」
本当にゲームみたいだなあ。
《レベル7:抑圧の泥畦》
大股の踏み込みから赤く光る刃を縦に振る。甲冑の化け物は素早く反応し、真っ向から受け止めたが、セガは相手の刀ごと力任せに押し切った。隻腕でよくやる。粘土遊びのように、化け物に刀の峰とセガの刃が深く食い込み、甲冑の化け物は消失した。
実際はセガの刃が甲冑の化け物を吸収したからだが、死体の残らない戦いはとてもゲーム的だ。
俺のほうは獣人形態で殴ったり、人形態でけ蹴散らしたりと暴れ回った。同じ世界の住人とは思えないな。
「しかしこいつら何かムカつくな」
単純に凶暴だった山の連中と違い、密林の人型は外もダンジョンも、こちらを見下したように睨めつけてくる。目だけが爛々として精気の欠片もない。こんなやつらを狩っても、腹の足しにもならないだろう。
「刀だけ消化されないね。ドロップアイテムかな。あー!歯ごたえないなあっ。昔は手も足も出なかったのに。きっとお兄さんが新しい世界に連れてったせいだよ!アクションRPGをケータイ小説にしやがって!エンコー!ビョーキ!純愛!体から始まる恋の病!」
これは告白と受け取ってよいのか。判断に苦しむ。
「そりゃもう!っと、ボスがポップしたっぽいぷっぷっと!」
赤い粘液がじるじると湧き、人型が形成されていく。シャチの父親と同じ湧き方だ。
「うん!?わたしどこかでみたような」
現れた人型はガリガリの妊婦。と言えるような姿をしている。密林のその他と同様、とても不愉快な目をしている。
「母親だったりするか?」
聞かなくても良いことを思わず口にする。シャチのあの笑顔が頭から離れない。
「あんなのがわたしの?いやあ。うちのお母さんはもっと私みたいにばいんばいんだし、あんな粗末な包丁つかってないよ。包丁だけは切れ味バツグン、胃袋と玉袋と子袋の達人だったよ!」
やめろよ。ご両親を辱しめるなよ。あとご両親は子供にばれないよう巧くやれよ。
「さっさと狩っちゃおう!ボスドロップがまってるぜ!」
ここまで無言のガルバを横目に見る。森のあの赤ん坊のときはシャチと二人して渋っていたが、今回の妊婦には思うところはないのだろうか。
俺はあの時のことが、シャチがいなくなった遠因と考えてしまう。だから似せたように湧き出てきた妊婦にどうしても後ろめたさを感じない。いずれ父親となる身とは思えない。最悪だ。それでも。
《レベル7:憎悪の止まり木》
復活して揃ったセガの両目は、いまだけ妊婦と鏡写しのようにギョロギョロと蠢いている。ゲーム感覚でいつも明るい彼女が。あんな目をしている。それでも俺は。




