後遺症
《この短剣で倒した相手から経験値とスタミナを吸収しているのです。それでぎりぎり飢え死にせずにすんでいます。そう、この武器もスキル持ちなんですよ。ガルバさんと同じですね》
「つまり、その爪だか鈍器だかわからない、私の愛娘とは似ても似つかない不粋なものに浅ましくも生き血を啜らせていけば良いのですね」
やめてやれよ。向こうタジタジじゃないかよ。汗をかく機能さえあればもう垂れ流しだったろう。
「種。私はその面白不愉快な保護色の毛からセガの服をつくります。あなたは彼女を乗せてさっきの赤いのを狩り尽くしなさい」
りょーかい。面倒なのか面倒みたいのかどっちかわからん。複雑な乙女心なのかね。
片手じゃバランスも取れないだろうから、リュックの中身をとりだしてセガを詰めこんだ。素材提供のために境界線を往復してから密林へ侵入する。
途中黒っぽいでかいやつもいたが、人形態で電撃まといながら飛び蹴りをぶちかます魔法?を使って文字通り蹴散らした。素材サンプルにいくつか回収してあとはセガの短剣のエサである。新しい素材があればガルバの気も逸れるだろう。二人してほくほく顔である。
《空腹が治まるわけではありませんが、ずいぶん楽になりました。経験値も美味しいですね。本当にありがとうございます。一人ではどうにもなりませんでした》
「口が取り戻せたらパーティーするか。それだって一人じゃできないことさ」
《パーティーですか。いいですね。他人と触れあうことをこんなに渇望するとは思いませんでした。お二人の関係をみて羨ましくなりました。そうですね。一人じゃできませんものね》
「ちょうど良いですね。できたてほやほやです。気に入ったやつを選んでください」
あ、服のことじゃないよ。赤色や赤黒色の化け物の活け〆めがほやほやなのである。巨大な果実と並ぶように吊り下げられて、凄まじい光景である。人型だし、山のときのようにエルフ形態の匂いに釣られて集まってきたのだろうか。一人にするのは失敗だったか。いや、一人でこれだけ釣り上げられるなら問題ないか。
《なんだか、刺せば刺すほどお腹がうずきます》
半端に食べると余計つらくなるってあれだろうか。
《あ、レベルが上がってパーツが戻ってきました》
「あ、本当ですね。ああ、そのパーツはラッキーですね」
《はい。幸先良いですね。約束通り、さっそくパーティーしましょう!》
「口は復活してないみたいだから味はわかんないだろうけど、じゃあ盛大に祝おうか」
《え?復活してますよ》
え?だって
《ぱしゅ ぐらっ》
水が。おい。これ後遺症とか中毒症とかないよな。
「種。あなたは女性のどこをみているのですか。ちゃんとお口は復活しています。さあ、触れあいパーティーを」
《楽しみです。一人じゃできませんものね。あれを見てからお二人の関係が羨ましくて。私もこんなに渇望するとは思いませんでした。食欲を満たしたらお腹がうずいて》
「二人でお腹いっぱいになるまでパーティーを楽しみましょう」
あれ、俺は?あ、俺は楽しませる側か。そうか。
「うっしゃー!経験積んでレベルアッープ!お兄さんサンキュー。戦闘よりこっちのが効率よくね?今晩もヨロシクゥー」
セガは一晩かけて新たに口と目、その他諸々を取り戻した。テレパシーだとわからなかったが、素の口調はすげぇテンションたかい。表情もつくれるようになり、シャチに負けないくらい豊かである。復活した一部諸々のパーツはシャチがボロ負けなくらい豊かである。恐るべき凶器を振り振り、ご満悦の様子だ。頼むからみんなまともな服を着てくれ。
「種。少しは落ち着きましたか」
お前が自慢の愛娘をかついでいるせいでそわそわしっぱなしだよ。とは口が裂けても言わないけどね。犬だけに。
「ああ、犬形態をメインにしなくて良いくらいにはな。ごめん」
「いえ、ちょうど離乳食が現れてくれてよかったです。おしゃぶりと組み合わせつつ、ゆっくり乳離れしましょう。私は父離れしませんけどね。むしゃぶり尽くします」
お前は本当に尽くしてくれてるよ。とは言わないけどね。愛娘の愛娘で裂かれそうだし。
この子たちを愛そう。戻ってきたシャチが嫉妬するくらいに。この世界がシャチの地獄じゃなくて俺の楽園だったんだと、思ってもらえるように。




