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つぎに
「ファンタジーというのはもしものお話なんだそうです」
王冠は角に食い込み、枷のようにも見えた。
「デリケートな話題って多いですからね。だから、もしも、仮に、エルフの住まう世界・ジンシュシャーベッツで、白エルフと黒エルフが大昔から敵対関係にあったとしても、それはもしもの話であるから発禁になったり、作者が路地裏で冷たくなったりすることもないって理由で、ファンタジーはつくられたとかで。夢も希望も幻想もない。現実的なお話ですね」
「そうですね。変わり種だと女ヴァンパイアと敬虔な僧侶の恋の話がありましたね。ホラー扱いされていますが、実際は情愛と女犯の禁忌に葛藤する若い心を表現したかっただけじゃないかと邪推してます。当時禁書扱いされないように、吸血鬼退治というファンタジー要素を盛り込んだのではないかと」
男は楽しそうに額を弾く。振動が伝って王冠が鳴る。
「クリエイターという存在の、その執着には完敗ですよ。なぜおつくりになられたのかは、もう聞くことはできませんけど」
「少しはその気持ちがわかれば良いのだけれど」




