けだものー
「うーん、まともな男に抱かれるのがはじめてだから、まともに男に抱かれるのもはじめてだ。私の周りろくな奴いなかったんだなー。あ、前世だからのーかんのーかん」
「じゅーかんじゅーかん」
「けだものー」
「「いえー」」
母娘でハイタッチしだした。意味がわからない。
「うふふふ、もう親子じゃないんだよ」
「そうです。第一夫人と第二夫人です。ちなみにちっちゃいもの順です」
「あははずるい。かわいいから許すー」
夜が明ける前には眠り、起きてまた夜。シャチとガルバの密約は切れ、今は三人。昨日よりずっと落ち着いている。
「新しいブーツにでもしてやろうかと思ったけど、やっぱりやめた。顔はお父さんでも、赤ちゃんだしね」
「これから母親になる私たちが、どんな理由であれ赤ん坊を殺すわけにはいきませんしね」
「あはは、毒がきついな我が娘は」
「いや、待て。ガルバを母親にさせねぇよ」
何だその目は二人して。
「本気で言ってるのかい。君、自分はガルバに手をださないと」
「何で手出しするのが当然の言い方なんだよ」
「なるほど、種まき機さんは家族サービスも得意ですね。娘の純情を自覚なく踏みにじる天才です」
ひどい言われようだな。
「そんなことをしなくても。お前は俺の大切な娘だよ」
「信じられません。1日2日で、人は人を愛せますかね」
「第一夫人は私の記憶もあるはずなんだけどなー」
「お前と俺は良く似ている。俺も不安だった。でも、例え出会ったのが一瞬でも、そのとき感じた気持ちが本物なら、それはきっと本当に愛してる。ってことなんだと思うようになった」
少なくとも、その一瞬、今このときは。
「いひひ、シャっちゃんが愛の奴隷にしちゃったか」
「エロとか抜きに真面目に骨抜きだよ」
「え、えへ!?えへへへへへ」
「信じきれません」
ぽろぽろと、無表情のままガルバは涙をながした。
「途中、お母さんと間違えて何度も私を"抱っこ"して気づかないような種まき機の言うことなど、聞く価値はないのです」
《ぱしゅ ぐらっ》
え?
「一姫二太郎がいいですね。でも、産まれてくれさえすればなんだって良い気もします。拙い愛の結晶です。とても神秘的なことで、でも当たり前のことなんですよね」
「うん。それに一線越えちゃってるし、下らない誠実さを捨ててとても神秘的に抱っこして、当たり前のようにがつがつしてくれるよきっと」
あれ?途中まで家族のつながりに関わる会話をしていたはずなんだけど。ガルバの目元から突然、涙が消え去り、俺は水に包まれているような心地よさに包まれた。
「涙を武器に男を落とす。我が娘、女になったんだね」
「種まき機。意識は、ありますね。私の涙を、ガス圧で、あなたの、血管まで、注射しました」
そんなにはっきり区切らなくても聞こえている。
「お母さんは麻の妖精なんですよ」
なるほど、古くから食と衣の象徴的存在ですね。中2心がうずきます。なんで俺もっと勉強して民俗学専攻しなかったんだろう。結局金にならないけど。
「ついでにお薬の妖精さんでもありますね」
「エルフねー。本当にエルフなの?だって木の股から生まれてきたんだぜ。君が畜生なら、私は鬼のたぐいだな」
「いいとこ取りの私は鬼畜ですね」
「うまいっ」
「「イヒヒヒヒヒヒヒ」」
これはあれだ。俺の貞淑さを試しているんだ。きっとそうだ。俺が本物だと思ったら、それが真実なのだ。少なくともっ、いまっ、このっ、時っ、ひゃあああっ。




