メスが産まれた
「うーん、まさか出会って1週間で出産するとは思わなかったなー。ふかふかー」
え?そういうプレイ?シャチは小型犬ちゃんをまるでお腹を痛めて産んだ子のように大事にしている。
《がるっ ばうっ》
小型犬ちゃんはシャチにとてもなついている。小型犬にありがちなひしゃげた鳴き声を上げているせいで嫌われていると誤解してしまいそうになるが。
「あなた、どうするの?」
「え」
「ほらー、メスが産まれたら自分が名付けるんだーって息巻いてたじゃない」
知らねぇよ。無茶ぶりすんなよ。答えるけども。全力で応えるけども。
《がるっ ばうっ》
「・・・ガルバ」
「わー、良かったねー。ね、ガルバ。ねー。子は親
を選べないもんねー」
堪える。シャチは自分の名前にコンプレックスがあるせいかとても冷たい。
俺は獣人モードで石切りの練習に逃げた。ガルバが好奇心たっぷりの瞳でこっちを見ていた。犬同士仲良くしようぜ。くれぐれも、女王様を怒らせないようにな。俺みたいに。
「わうっ。わうっ」
なんだこいつは。
昨晩、宣言通り薄着を敢行したシャチを俺とガルバでサンドイッチして寝ていたはずだが、目が覚めるとちっこいコボルトがいた。顔もどこか幼い。子ボルトだ。
「匂いでわかるんでしょ?」
「うん、ちょっと質が変化しているけど、ガルバだ」
「わわうわうっ」
「お父さんの真似してみたんだねー。すごいすごい」
真似って・・・俺は1週間かけたんだぞ。それを一晩で。天才か。娘の成長が恐ろしいぜ。
「やっぱり何でもありなんだねここ。うーん。お父さんちょっと失礼。女子会するから」
シャチにテントから追い出される。しょうがないので石切りとダンスの練習をする。うかうかしてるとガルバが先に人間になってしまいそうだ。俺は小さなライバルとの血沸き肉踊る競争を想像し、ほくそ笑む。負けないぞ、娘よ。
「上手くいきましたね、お母さん」
「いやー、魔法が使えることが条件だったんだね。ガルバちゃんだからこそだよ」
なんだこいつは。
「ほら、お父さんに見せつけちゃって」
「改めまして。お母さんの継承魔法でエルフになりました、ガルバです。よろしくお願いします種馬さん」
「せめてお父さんで」
「私は近親相姦の嗜好は持ち合わせておりません。これでも元成犬。私だって奥さんにして欲しいです」
「さすが私の娘。欲望に忠実だねー」
「大丈夫ですよ種馬さん。性欲の塊だったんでしょう。人間に戻れたらお母さん一筋云々なんて興奮のスパイスにしかなりませんよ」
「「イヒヒヒヒヒヒヒ」」
ガルバはシャチから何を何処まで継承したのだろうか。全てか。女王様が二人に増えた。お父さんか。一夜の夢だったかぁ。




