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夏生詩集

裏切ったのは、私

作者: 夏生

あの子は今、どうしているかな


海外のアイドルを一緒に追いかけて


英語でファンレターを一生懸命書いて


一緒にポストにいれた


はじめてのエアメールに胸ときめかせた



私がくじけそうな時は話を聞いてくれて


お互いにいろいろ、恥ずかしいことも


ヒソヒソ話合った


私はあの子が大好きだった


あの子も私に優しく付き合ってくれた



裏切ったのは、私


裏切るつもりはなかったけれど


あの子の心を曇らせた手応えは、あった


あの子の心をキリキリと爪を立てて、傷つけた


傷つけるつもりはなかったけれど


私の指先にはあの子の心を引っ掻いた跡が


残っている


ある日、あの子は私を突き放して


どこかへ行ってしまった


引き止めたかったけれど、私も


あの子を突き放していた



思い出すのは、楽しかったことばかり


あの子と寄り添った時間は凍結したまま


優しいあの子の笑顔が今、私の心に


爪を立てている


会いたい、けれど、会えない、戻れない


そばにいたかった


離れるなら、せめて、ごめんね、と


言いたかった



大切な人を失う形は、死別だけではないのだと


知ってしまった


ちぎれた縁はうなだれて、風にふかれて


ゆらゆら、寂しく揺れていた










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