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ストーカーまがいのお客さんはあれ以来
お店に姿を見せることはなくなった。
ほっと一安心。
あたしの周りは穏やかな空気が戻ってきて
今でもすっかり廣岡さん大好きな片桐さんと
恋バナすることもちらほら。
ここに来た当時には考えられなかったことです。
『廣岡さんと、この前映画行ったのよね。
そしたら、彼、感動して一粒だけ涙が目に光ってて
じっとスクリーン見てんのよ・・・・
映画よりその横顔にキュンときて♪
もう最高だった~♪
ぜひ、雄輔さんと見に行ってみて♪』
・・・・・・・・・
嬉しそうに語る片桐さんには申し訳ないけど
それって・・・・・
ただのノロケ?
映画の内容には一切触れられていません。
片桐さんがその映画を観た感想も
一切含まれていません。
でも彼女はとても満足したらしく・・・・
「んじゃ、休みに見に行ってみっか?
ちょうど見たい映画だったし。」
聞いていた雄輔さんがあたしにほほ笑んだ。
・・・・・・・
今ではすっかり公認になったあたしたち。
後ろでニマニマしている店長が気になりますが
ま、気にしないことにしましょう・・・
今まで、
こんなにみんなに自然に受け入れられたお付き合いって
したこと無かったから
なんだか、妙な気分・・・・・
でも、こういう雰囲気、嫌いじゃない。
空気が優しくてあったかくて、柔らかい。
今までの職場にはなかった空気。
そう、この良さは、働く人しか分からない。
なのに・・・・・・
「うわぁ・・・マジでこんなとこにいた。」
聞き覚えのある声に振り返ったあたしは
見覚えのある顔が歪んでいるのを見た。
「なに、お前、マジでここで働いてんの?」
「そうですけど、それが何か?」
「かわいそーーー。菊池さんも残酷なことするよなぁ。」
「・・・・・・・・・・・」
前の会社で同期だった多田さん。
時々一緒に仕事することはあったけど
そう親しいわけでもなかった。
なのに、いきなり何ですか・・・
あたしは思わず眉間にしわを寄せてしまった。




