⑧
「えーーっと、何かお探しでしょうか?」
「あなた、英語分かりますか?
探し物があるのですが。」
流暢な英語に、ちんぷんかんぷんと言った顔した雄輔さん。
片桐さんはというと、無駄に笑顔を貼り付けて
だけどその顔、引きつってるよ・・・・
仕方ないなぁ・・・
「どういったものをお探しですか?」
あたしは近寄ると声をかけた。
「おー、あなたは話出来ますか。
実は日本の絵本をお土産にと思うんですが
簡単な日本語も覚えられそうな絵本
ありませんか?」
嬉しそうに話すお客様。
しばし考えて、あたしは問いかけた。
「どのような方へのお土産ですか?
子どもさんでしょうか?」
あたしの問いに、大きくうなずく。
「4歳の娘にお土産です。」
「それでは・・・・このような物はいかかがでしょう。」
あたしは、数冊の絵本を抜き出すと
お客様の前に並べた。
「日本では2歳から3歳くらいの子ども向けの
本です。文字が少なく、絵が綺麗ので
日本の子どもたちにも人気の絵本です。」
丁寧に絵本を手にとり、パラパラとページをめくる。
そして、その中から3冊抜き取ると
「いい絵本に巡り合えました。
ありがとう。」
と、笑顔で感謝された。
「どういたしまして。娘さんが
喜んでくれると良いですね。」
とあたしもほほ笑んで、レジへと案内した。
片桐さんが、奇妙な笑顔を貼り付けて
レジを打った。
ホッとして、あたしはまた自分の仕事に戻る。
「何あれ・・・あんた何もん?」
びっくりした顔で雄輔さんがあたしに囁いた。
「え?いや・・・そんな大したことでは・・・」
専門用語もないし、簡単な日常会話だったはず。
「急にあんなぺらぺらっとじゃべれるわけねーだろ。
あんた天才?すげーなぁ。
もしまた、外国人来たら、頼むぜ。」
ポンと肩を叩いて、雄輔さんも仕事に戻る。
・・・・・・・・
天才でも何でもない。
ただ、鬼課長にしごかれただけ・・・・