③
今日は、朝から片桐さんが
紙とマジックを運んで、
レジの後ろの棚に置いていた。
何でまたあんなところに?
と思ってそれとなく見ていると
レジの手が空いた時に
紙に何か書いている。
何か難しい顔して考えながら。
何書いてんだろ・・・
さりげなく通りすがりに見てみると
それは新刊につけるPOPだった。
・・・・・・・・・・
『面白い!』
『店員お勧め!』
『読んで損はないです!』
・・・・・・・・・・・・
そんなんでいいのか?って、
ちょっとびっくりした。
でも、まぁいいや。
あたしには関係ない。あたしの仕事じゃないから。
しかし、もうちょっとひねった言葉、書けないのかな・・・・
そんな思いが顔に出てたのか
顔をあげた片桐さんが
あたしの顔を見てムッとしたように言った。
「何か文句でもあんの?」
いや・・・あたし何も言ってないし。
「何かあたしのPOPに言いたいことあるんだったら
口に出して言ったら?
そんな顔して見られてたら気分悪いんだけど。」
ギロッと睨んだ片桐さん。
何でそんなにあたしにつっかかんのよ。
「別に何もないですから。」
サラッと言ったつもりなのに
片桐さんはさらに突っかかってきた。
「文句あるんだったらあんたも書いてみなさいよ。」
だから文句なんて言ってないじゃん。
「何もめてんだぁ?」
雄輔さんが声をかけてきた。
もめてないから。
「この子、あたしのPOP見て、変な顔してんの。
だから、文句あったら言ってみなさいって。」
「へぇ・・・。POPなんて誰でも書けねーからなぁ。」
「でしょ~♪」
でしょ~♪じゃないよ・・・
んなもん誰だってかけるでしょ。
あれくらいのヘッタクソな言葉くらい。
そう思ったのが思いっきり顔に出てたらしい。
「バカにしてるでしょ。あんた。」
片桐さんが、まつ毛バチバチの目を吊り上げて言った。
そして、おもむろに紙とマジックを
あたしの手に押し付けて言った。
「あんたも書いてみなさいよ!
書けるもんならね!」