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さくら咲く  作者: みほ
22/110

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ソファーでぼんやり過ごすこと数時間。


あたしは、少しづつ移動して


取り合えずトイレを済ませ、


必要になりそうなものをテーブルの上にセットした。


立たずに取りたい時に取れるように。



さっき雄輔さんが買ってきてくれた


パンや飲み物は、実にありがたかった。


バナナも買ってあった。


これがあれば、ご飯の代わりにはなる。


冷蔵庫に入れなくていい優れもの。


気が利くというかなんというか・・・


優しいオトコというのはたちが悪い。


いつのまにか心に忍び込んで


そのくせ、風のように通り過ぎていくんだから。



よっこらしょとソファーに横になり、


ふと、涙が止まったことに今更ながら気づく。



頬にさっきの手のぬくもりを思い出し


そっと、手を当ててみた。



そして、かみしめるように心でつぶやいた。


『騙されちゃいけない・・・』


って。



*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆


ぎっくり腰は翌日にはましになり、


3日目には完全復活した。



「よかったな。早く治って。」


「あの時はお世話になりました。」


お礼を言ったあたしに、


「ほんとよ!一体何事かと思ったわ。」


と、なぜか機嫌良くなった片桐さんが


話しに入ってきた。



片桐さんが店を飛び出した後、


10分程度であたしは帰宅を命じられたため


どうなったかは知らなかったけど


どうやらうまく雄輔さんが話してくれたらしい。



それはそれでよかったんだけど、


あたしは、その日の仕事中、倉庫の片隅で


片桐さんに追い詰められていた。



「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」


早く仕事に戻んないといけないんじゃないかなぁ・・・


と思いつつ、片桐さんの迫力に


ちょっとげっそりしながら答えた。



「あなた、雄輔のこと好きなの?


勘違いしないでよね。雄輔からは


はっきり聞いたから。


介抱されたからって、


自分のこと好きだなんて勘違いしちゃだめよ。」


・・・・・・・・・・・・・・・


絶句。


なんのこっちゃ・・・・



「ご心配なく。


あたしは別に雄輔さんのこと


好きじゃありませんから。」


ため息交じりに言うと。


「あらそう、良かった。邪魔しないでね。」


そういうと、あたしを残して


さっさと店内に戻って行った。



何なのよ・・・


別にあたしは雄輔さんを好きになんて


なったりしない。


彼だけじゃなく誰も。


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